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JALの安全問題:相次ぐミスは同社の組織規律の緩さを物語る

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大きな事故の前兆は小さいともいわれる。日本航空は組織の緩みをなくし、安全確保の基本行動を徹底する必要がある。

国土交通省は、相次ぐ安全事故を受け、航空法に基づく日航への臨時立ち入り検査を実施した。今年2月にも立ち入り検査を行っており、3カ月で2度も立ち入り検査を行うのは異例の事態だ。

同省は今回の検査に合わせて、行政指導に当たる厳重注意処分も出した。

日航機が昨年11月と今年2月、米国の2つの空港で滑走路に誤進入したり、滑走路手前の停止線を踏み越えたりする事故があった。これを受け、国交省は初の調査を実施し、再発防止策を提出した。

しかし、5月には福岡空港で航空機が停止線を越えるトラブルが発生した。また、米国発の飛行機の機長が搭乗前に泥酔状態となり、欠航となる事件もあった。

いずれもけが人は出なかったが、管制官の指示を機長が十分に確認しなかったなど、基本的な対応にかかわる問題であり、機長の飲酒問題も含め、日航には乗客の命を預かるという真摯さが欠けていたと言わざるを得ない。

特に重大なのは、5月の福岡空港での事故では、1月の羽田空港での航空機衝突事故の際に講じられた措置が適用されなかったことだ。

海上保安庁機と日航機が衝突し炎上した羽田空港の事故は、海上保安庁機が管制官の指示を誤って解釈し、滑走路に誤進入したことが原因とされている。

政府は緊急措置として、操縦士に指示の復唱と管制官による確認を義務付けているが、5月の福岡空港の事故では双方ともこれを怠っていたとされる。

衝突炎上という衝撃的な事故を忘れてしまったかのようだ。相次ぐミスの背景には組織的な緩みがあるのではないか。原因を検証し、再発防止策を検討する必要がある。

パイロットとのコミュニケーションにおいて誤解が生じないよう、管制官の実際の運用についても対策を講じる必要がある。

滑走路への誤進入時にパイロットに警告する警報装置の設置など、ヒューマンエラーを補う装置の導入も推進すべきだ。

昨年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で急減していた訪日外国人旅行者数が回復し、航空旅行の需要が急増している。

日航は1985年のジャンボ機墜落事故以降、社員に徹底してきた安全教育を原点回帰すべき時だ。客室乗務員出身で4月に就任した鳥取光子社長には、安全の徹底を経営の最重要課題に据え、リーダーシップを発揮してほしい。

(読売新聞2024年5月29日号より)



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