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G7財務相会合:凍結されたロシア資産を活用するための措置が緊急に必要

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ロシアの攻撃を受け、武器や弾薬の調達や復興資金の不足など厳しい状況にあるウクライナ。先進7カ国(G7)が主導し、具体的な支援策の策定を急ぐことが期待される。

先日イタリアで開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議は共同声明の採択で閉幕した。

会合では、経済制裁により凍結されたロシア中銀の資産約3000億ドル(約47兆円)をウクライナ支援にどう活用するかが主な議題となった。

危機が長期化する中、欧米ではウクライナ支援疲れが広がっている。米国の軍事支援は半年ほど停滞し、ようやく4月に610億ドル(約10兆円)の追加予算が承認された。

世界銀行は、ウクライナの復興に必要な資金は今後10年間で4860億ドル(約76兆円)に上ると推計しており、この資金をどう調達するかが今後の課題となる。

ロシアの国際法違反の侵略によって生じたインフラなどの損害は、本来はロシアが賠償すべきものであり、そのために凍結資産を活用することは正当であるといえる。

凍結資産の約3分の2は欧州連合(EU)諸国が管理している。EUは今月、主要7カ国(G7)首脳会議を前に凍結資産を活用する計画で合意した。国債など凍結資産の元本には手を付けず、現金部分の収益を活用する計画だ。

この資産は年間約30億ユーロ(約5000億円)の収益を生み出すと見込まれており、EUはこのうち90%をウクライナの軍事支援に、10%を復興支援に充てる予定だ。

しかし、EUの計画だけではウクライナへの十分な資金を集めることはできない。支援額を増やす枠組みの検討をG7が主導することが不可欠だ。

G7の声明はEUの合意を「歓迎」し、G7諸国は「議論が進展している」と総括した。G7会合では、米国が凍結資産から将来生じる利息を「担保」として500億ドル(約8兆円)規模の融資を提案したと報じられた。

米国の案は短期間で多額の資金を供給できる利点があるが、金融市場の動向次第では期待した資金が得られない可能性もある。G7としては米国の案を議論のたたき台にし、どこまで支援が可能か精査することが重要だ。

G7の議論が前進したのは、米国が、より多額の資金を活用できる資産差し押さえ案から、現行案に切り替えたためだ。日本政府は、差し押さえ案は国際法に違反する恐れがあると主張していた。G7の声明では、ロシアの凍結資産から生じる利益の活用は「国際法や各国の法制度に合致するべき」とも明記されている。

来月の首脳会議で合意に達するよう、G7が徹底的な議論を行うことが期待される。

(読売新聞2024年5月30日号より)



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