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AIに対する法的規制:リスクを直視し議論を再開

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政府はようやく人工知能の法的規制に着手したようだが、「数年かけて議論する」と言っているのだから、本当にAIを規制するつもりなのか疑問だ。

政府はAIを巡るさまざまなリスクに真正面から向き合うべきだ。これまでのAI推進重視の姿勢を改め、議論をゼロからやり直すことも選択肢の一つだ。

これまで政府はAIの規制に消極的で、AI開発が経済成長を促進できるよう業界に自主規制をさせようとしてきた。

しかし、AIには犯罪目的で精巧な偽動画の作成に利用されたり、個人情報が無断で収集されたりするリスクもあります。

米国は昨年、安全保障上の目的でAI開発を規制する大統領令を発令した。欧州連合(EU)も今月、AIを包括的に規制するAI法を制定。早ければ2026年から加盟国に適用する方針だ。

EUのAI法は、AIから民主主義と人権を守ることを目的としている。この法律は、オンラインで人々の顔写真を自動的に収集し、データベースにまとめるAIやその他の技術の開発を禁止している。

こうした欧米の取り組みを踏まえ、政府もAI規制の検討に乗り出した。政府の方針を踏まえ、東京大学の松尾豊教授が議長を務めるAI戦略会議で、規制の具体的な方策を検討するとされる。

提案されているものの一つは、AIが犯罪を助長したり個人情報を漏らしたりするような答えを出さないよう、政府が開発企業に安全性検査を義務付けるというものだ。

こうした措置が実施されれば、AIの安全性が向上することが期待されるが、政府が実際に規制を実施するとしても、数年先を見据えているといわれている。

なお、AI戦略会議は、規制において著作物をどのように保護するかについては検討しない方針だ。

2018年に改正された著作権法では、AI開発企業は著作権者の許可なく著作物をAIに学習させることが認められている。

著作物が商品開発に利用されているクリエイターらは、創作活動の妨げになるとして同法を批判している。

こうした状況を放置すれば、文章や絵画など創作意欲が失われ、芸術・文化が衰退する恐れがある。政府は著作権法の再改正に早急に取り組むべきだ。

だが、もっと根本的に、AIの活用を強力に推進してきたAI戦略会議に規制の議論を任せるのは妥当なのだろうか。政府が実効性のある対策を打ち出すつもりなら、議論の場を変えることも検討する必要がある。

(読売新聞2024年5月24日号より)



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