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国際標準化戦略:人材育成の加速で主導権を握る

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工業製品やデジタル関連技術などの国際標準を巡る競争が世界的に激化している。人材育成で産業競争力を強化していくべきだ。

政府は国際標準づくりに積極的に関与するため有識者会議を設置し、来春にも先端技術などに重点を置いた国家標準戦略を策定する方針だ。

国際規格とは、製品やサービスの互換性や品質を確保するための基本仕様であり、国際標準化機構(ISO)などが定めています。国際規格の代表的なものとしては、R14やR6の乾電池やQRコードなどがあります。

自社の開発した技術が国際標準として採用されれば、自社製品の競争力が高まり、海外での販売も容易になる。その先頭に立つために、企業は人材や資金、体制を強化することが急務となっている。

しかし、日本にはこの観点からの明確な国家戦略が欠けている。

こうした中、産業用押しボタンスイッチで高いシェアを持っていた日本企業が、欧米のライバル企業に先を越され、自社製品の仕様が国際標準として認められたことで売上が落ち込んだが、その後、高性能な自社製品の仕様が国際標準として認められ、挽回したという事例がある。この事例は大きな教訓を与えてくれる。

問題となっているのは、従来の工業製品だけでなく、経済安全保障の面で重要性が高まっている量子技術などの先端分野の製品も含まれる。

2020年代に入り、米国、中国、欧州連合は脱炭素化や人工知能などの先進分野で国際標準化を推進する戦略を打ち出した。

技術面での優位性を獲得するには国際標準が極めて重要であり、日本は遅れをとってはならない。

近年、日本は脱炭素化の分野で存在感を示しており、走行時に二酸化炭素を排出しない燃料電池車用の水素ステーションや電気自動車用のリチウムイオン電池など、日本の規格が国際標準となっているものも少なくない。

日本が強みを持つ分野を特定し、官民連携で重点的に支援していくことが期待される。

最大の課題は人材育成だ。現在、国際標準交渉の担い手は、日本の成長を支えてきた企業の研究開発部門や業界団体の代表者らだが、その7割以上が50歳以上で、人材の減少は避けられない。

国際機関での交渉には語学力や専門的技術力が必要であり、政府は積極的に研修や若手育成に努める必要がある。また、企業においては、国際基準の重要性に対する認識を深め、適切な社内人事評価を実施して専門人材を増やすことが重要である。

(読売新聞2024年7月28日号より)



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