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ガザ情勢: 米国の混乱が停戦要求に水を差す

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米国は、イスラエルにパレスチナ自治区ガザでの停戦を受け入れさせる真剣さを直接伝える重要な機会を最大限生かしたとは言い難い。

ジョー・バイデン米大統領は米国訪問中のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した。バイデン氏はネタニヤフ首相に対し、イスラム主義組織ハマスとの停戦を実現し、人質解放に合意するよう求めた。

しかし、ネタニヤフ首相はこれに対し、これまで同様、米国に軍事支援の増強を求めたとみられる。また、即時停戦を求める米国と、人質解放を優先すべきと主張するネタニヤフ首相の溝は、今回の会談でも埋められなかったようだ。

昨年10月に戦闘が始まって以来、初めてネタニヤフ首相が米国を訪問したが、両首脳が戦闘停止への道筋をつけることができなかったのは残念だ。

会談に先立ち、ネタニヤフ首相は米下院と上院の合同会議で演説した。首相は戦闘継続への決意を強調し、イスラエルは「ハマスを壊滅させ、人質全員を帰国させるまで戦う」と述べた。

ハマスは長年ガザを実効支配し、住民の間に浸透している。イスラエルがハマスを壊滅させることは物理的に可能か。非現実的な目標を掲げて暴力を拡大することは許されない。

伝統的に親イスラエル派だった米国の世論は、現在分裂している。共和党議員はネタニヤフ首相の議会演説を称賛したが、民主党議員の多くは欠席した。国会議事堂周辺では、イスラエルに抗議する数千人のデモが行われた。

世論が厳しくなる中、バイデン氏はネタニヤフ氏にもっと強く自制を迫ることもできたはずだ。だが、ネタニヤフ氏の訪米直前にバイデン氏は再選を目指さないことを決め、後継候補としてカマラ・ハリス副大統領を支持。

こうした米国政治の混乱が、バイデン氏のネタニヤフ氏説得の努力を弱めたことは否定できない。

戦闘が始まってから9か月以上が経過したが、イスラエルの武力行使が止むことなく続く中、ガザの人道状況は悪化し続けている。

ガザ保健当局によると、イスラエル軍の攻撃による死者は3万9000人を超えた。また、国連パレスチナ難民救済事業機関の現地職員197人もガザで死亡した。

バイデン氏は来年1月までの任期を全うするつもりだ。任期が続く間、イスラエルが態度を変えなければ米国は軍事援助を停止するという警告を貫くべきだ。

(読売新聞2024年7月27日号より)



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