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小林製薬:製薬会社の安全性を軽視する企業文化は甚だしい

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健康維持を目的としたサプリメントを製造している製薬会社が、自社製品による健康被害に対して消費者の安全性を無視し続けていることは許されないことだ。

小林製薬は、紅麹菌を含むサプリメントによる健康被害が相次いでいる問題で、創業家出身の小林一正会長と小林章弘社長が責任を取って辞任すると発表した。同社は、社外弁護士による調査報告書も公表した。

次期社長には山根敏専務が8日付で昇格する。同社によると、創業家以外が社長に就くのは初めて。

調査報告書はまず、健康問題の公表や問題の製品の回収が遅れるなど、初期対応が遅かったことを指摘した。

小林製薬は1月中旬に自社のサプリメントによる健康被害を認識していたが、3月下旬まで政府に報告せず、製品の自主回収も発表しなかった。

調査報告書は同社が「消費者の安全を最優先に考えていなかった」と指摘し、遅くとも2月上旬には「会社全体で早急に対応すべき緊急事態だった」と批判した。

健康被害が拡大していたにもかかわらず、会社の対応は危機感を著しく欠いていた。調査報告書によると、小林社長は当初から先頭に立って対応できず、危機管理本部も設置しなかった。企業統治の機能不全は明らかだ。

安全を軽視する企業体質も深刻だ。行政への報告義務は、製品と健康被害の因果関係が明らかな場合に限られると恣意的に解釈していた。

また、政府への報告の要否を議論した経営陣の会議記録には、「風評リスクや事業への影響を考慮して判断する」との記述があった。業績悪化を恐れて政府への報告が遅れるとしたら言語道断だ。

調査報告書では、従業員への聞き取り調査で製造工程の管理がずさんだったことも明らかになったとしている。

健康被害との関連が疑われる青カビは、工場のベニコウジの培養タンク内で検出されたが、当時の担当者は「多少は混入しても構わない」と放置していた。

品質管理システムを徹底的に見直す必要がある。

会社側が説明責任を果たさない姿勢も看過できない。

サプリメントと約100人の死亡者の症状との因果関係については現在も調査が続いており、消費者の懸念は大きい。だが、小林製薬は記者会見も開かず、経営陣の交代を発表しただけだった。

小林製薬が再発防止策をまとめるのは当然だ。記者会見を開き、このような事態に至った原因や背景についてどう考えているのかを語るべきだろう。

(読売新聞2024年7月25日号より)



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