ホーム Fuji イスラエルのグラフィックノベルがイスラエルとパレスチナの分断を巧みに描く。今読む価値のある新しい日本語訳

イスラエルのグラフィックノベルがイスラエルとパレスチナの分断を巧みに描く。今読む価値のある新しい日本語訳

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バヴア氏が日本語に翻訳し、サウザンズ・オブ・ブックス社から出版された、ルトゥ・モダン著『トンネルズ』の表紙。

ルトゥ・モダン著、バヴアによる日本語訳 (サウザンド・オブ・ブックス社)



イスラエルは昨秋、パレスチナ自治区ガザへの攻勢を開始した。世界中から停戦を求める声が上がっているにもかかわらず、イスラエル軍も、イスラエルを最初に攻撃したイスラム組織ハマスも、一歩も引く気配を見せない。そのせいで苦しんでいるのは、一般市民のようだ。

『トンネルズ』は、イスラエルの女性グラフィックノベル作家、ルトゥ・モダンの最新作です。「イスラエルが世界の大半から非難されている今、なぜイスラエルの作品を紹介するのか?」と思われる方もいるかもしれませんが、『トンネルズ』は2020年にイスラエルで出版されたもので、現在の戦争とは直接関係がありません。今月、日本語訳が発売されたのは偶然です。しかし、だからこそ、今だからこそ読む価値のある作品だとあえて言います。

ニリはイスラエルに住む無職のシングルマザー。考古学者の父は、神がモーゼに与えたと言われる石板が収められた契約の箱を探し続けている。ユダヤ人にとって、それは苦しみを終わらせる伝説の宝物だ。しかし、インティファーダ(イスラエルの占領に対するパレスチナ人の蜂起)により、遺跡発掘のためのトンネル工事は中断を余儀なくされた。その後、ニリの父は認知症を患い始め、陰謀を企むラフィ教授に仕事と社会的地位を奪われる。これに憤慨したニリは、父の名誉を回復したいと願う。

そして、そのチャンスがやってくる。父の発掘現場には、巨大な障壁が築かれ、そびえ立っている。契約の箱はパレスチナ領内にあるようだ。それでも、ニリたちはトンネルを掘り続ける。すると、なんと、反対側から誰かがトンネルを掘っていることに気づく。それは、かつてニリの父の発掘を手伝ったパレスチナ人のマフディだった。地下でぶつかった2つの異なる民族は、世紀の財宝をめぐって争うのか、それとも手を組むのか。

契約の箱は、インディ・ジョーンズシリーズの第1作『レイダース/失われたアーク』にも登場した魔法のアイテムです。『トンネルズ』は読むだけでも十分面白いのですが、イスラエルとパレスチナの歴史を少し知っておくと、より深く理解できます。その点で特にお勧めなのが、花伝社の『誰も知らないイスラエル』です。バブアが編著したこの本には、『トンネルズ』の著者へのインタビューも掲載されています。

バブアーは、日本とイスラエルの両方にルーツを持つ高校教師の男性と、多民族社会を研究する日本人女性学者の2人組ユニットです。パレスチナ人のための人道支援団体を通じて知り合った2人は、パレスチナ問題の解決にはイスラエル社会の複雑さを人々に伝える必要があると同意しました。『トンネルズ』の翻訳もこの取り組みの一環でした。

確かに、多民族国家イスラエルの多様性は、日本人の想像を遥かに超える。『誰も知らないイスラエル』を読んだ後に『とんねるず』を読み返してみて、その多様性が何気ないシーンにさりげなく散りばめられていることがよくわかった。著者はイスラエル人だが、どちらにも偏らないバランス感覚と皮肉たっぷりのユーモアには感心するばかりだ。

「とんねるず」は、私たちが期待するような甘い結末ではない。しかし、未来への希望を与えてくれる。そして、マンガやグラフィックノベルには、そのような力が備わっているのだということを思い出させてくれる。



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