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幅広い協力を通じて海洋秩序を守る

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日本と太平洋島嶼国はいずれも海洋国家であり、地域の安定を促進するために協力することが重要です。

日本は、南太平洋の18カ国・地域の首脳らを招いて太平洋・島サミット(PALM)を主催した。1997年以来3年ごとに開催され、今年で10回目を迎えた。

会合で採択された首脳宣言と共同行動計画では、日本は気候変動や安全保障など7つの優先分野で協力すると明記された。

気候変動対策では、準天頂衛星を活用し、太平洋島嶼国の住民に災害情報を提供するシステムを導入する。通信手段が途絶えた場合に備え、各国の支援に役立てるのが狙いだ。

バヌアツとフィジーは南太平洋のプレート境界に位置しているため、大地震に見舞われることが多い。ツバルとマーシャル諸島は海抜の低い国であるため、海面上昇と津波に悩まされている。

日本の優れた衛星技術が、島嶼国の災害対応に役立てば、日本とこれらの国々の信頼関係も深まるだろう。

安全保障分野では、太平洋島嶼国の海上保安能力の向上を支援するため、海上保安庁と自衛隊を派遣し、人的交流を強化する。

南太平洋は日本にとって重要な海上交通路であり、漁業についても、島嶼国との協定に基づき、日本漁船は島嶼国の排他的経済水域でマグロやカツオなどの漁獲が認められている。この地域の国々との協力関係を深めることは、日本の国益にかなう。

首脳宣言では、中国を念頭に「参加国は、武力や強制力による威嚇や行使によって現状を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対する」とも述べられた。PALMが宣言にこのような文言を盛り込んだのは初めてだ。

中国は南シナ海の岩礁を埋め立て、一方的に軍事基地化するなど海洋進出を強行している。太平洋島嶼国も中国の動きを警戒しているとみられるが、中国は港湾や空港などのインフラ整備に巨額の支援を行い、関係強化を図っている。

首脳宣言には中国を牽制する表現が含まれていたが、太平洋島嶼国が中国との良好な関係を再考すると想定するのは早計だろう。

米国と中国は近年、南太平洋における覇権を争っている。

この地域の多くの国はかつて台湾と外交関係を結んでいたが、中国が外交攻勢を強めるなか、ソロモン諸島、キリバス、ナウルは台湾との国交を断絶し、北京と国交を結んだ。

一方、米国は昨年ソロモン諸島やトンガに大使館を開設するなど、この地域での影響力回復に努めている。

日本はこれまでPALMの開催を通じて太平洋島嶼国との友好関係を築いてきた。今後もこうした良好な関係を生かし、各国・地域のニーズに応じた支援を行っていくべきである。

(読売新聞2024年7月19日号より)



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