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トランプ銃撃事件:暴力的な攻撃は民主主義を破壊するのか?

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米大統領選の選挙戦の最中に流血事件が起きたことには驚きを禁じ得ない。民主主義の基盤である選挙が暴力に脅かされることに深い懸念がある。

ドナルド・トランプ前米大統領は、米ペンシルベニア州での選挙活動中に銃撃された。顔から血がにじみ出ているトランプ氏は、シークレットサービスの警備員に押さえられながらも、拳を突き上げて生きていることを示した。この映像は瞬く間に世界中に放映され、衝撃が広がった。

容疑者の男性はシークレットサービスによりその場で射殺されたが、現場にいた1人が死亡、2人が重傷を負った。悲劇だ。

トランプ氏は今月の共和党大会で正式に大統領候補に指名され、11月の大統領選で政権に返り咲くことを目指している。米政治の行方を左右する重要人物を狙った銃撃事件の真相はどこにあったのか。捜査当局の解明が急がれることが期待される。

今回の大統領選挙ではトランプ大統領と民主党のジョー・バイデン大統領が激しい競争を繰り広げている。

トランプ氏は、2020年の前回選挙でバイデン氏に負けたことを認めず、選挙は盗まれたと主張している。バイデン氏は、選挙運動からの撤退を求める党内の意見を無視し、自分こそがトランプ氏に勝てる唯一の民主党員だと主張している。

政策論争が深まらない選挙戦は、双方が互いの人格を貶める中傷合戦に陥っているようだ。両陣営は、敵意と憎悪が高まる中で候補者が攻撃され、犠牲者が出た事実を重く受け止める必要がある。

米国は戦後、公正で開かれた選挙を通じて民主的な国家建設の理念を国際社会に広める役割を果たしてきた。米国内で暴力による選挙の歪曲が繰り返されれば、その悪影響は計り知れない。

今回の事件は両陣営が冷静な選挙戦に戻るきっかけになるはずだ。バイデン氏はトランプ氏に電話し、同情を示して結束を訴えた。そのための第一歩となるはずだ。

アメリカでは、政治家が政治活動中に襲撃され殺害されるという血なまぐさい歴史がある。

1963年、当時の大統領ジョン・F・ケネディは車列に乗っているときに銃撃され死亡した。1968年の大統領選挙運動では、民主党の指名候補の最有力候補と目されていた弟のロバート・ケネディ上院議員が暗殺された。ロナルド・レーガン元大統領も在任中に銃撃され負傷した。

しかし、米国はこれまで危機を乗り越え、国民の意思に基づいてリーダーを選出してきた。米国が政治と社会の強靭性を示し、安定を取り戻すことが期待される。

(読売新聞2024年7月15日号より)



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