2024年7月14日 16:00(日本時間)
だしは、日本料理にコクと深みを与えるうま味のあるベースとなるスープです。食生活の欧米化により、伝統的な料理を作る家庭が減る一方で、独自の方法でだしを提供するレストランや、市場の専門店を巡るツアーが注目を集めています。
これらは、だしの魅力を一般の人々に再発見してもらうための取り組みの一例にすぎません。
味わう時間
3 つのグラスには白ワインが入っているように見えますが、実際には入っていません。
「右から、昆布とかつおをベースにした出汁と [one glass] 「2つを混ぜて作ってみました。それぞれ味見してみてください」とフードサーバーが言う。
京都市上京区のラーメン店「昆布と麺 喜一」では、食前にだし汁をグラスで提供。7日に店頭で試飲した客からは「だしの香りがいい」「だしと麺を合わせると味が全然違う」と驚きの声が上がった。
このレストランでは、5月から10月まではつけ麺の代わりにラーメン1種類だけを提供しています。ラーメンの食べ方がこのレストランのユニークさをさらに引き立てています。
まずは、昆布出汁に浸した麺と千切り昆布、刻み昆布を器に盛り、混ぜて食べるだけ。これだけでも十分満足できるが、同店ではサバ節や煮干しを使ったつけ汁も提供している。
店員さんは、残りのスープを蕎麦湯のようにどんぶりに注いで味わうことを勧めています。
「いろいろなだしを食べ比べるのも面白いし、だしに深い魅力を感じた」と、この店を訪れた名古屋在住のミュージシャン(37)は語った。
1日30食限定で提供するラーメン店だが、昨年4月の開店以来、ほぼ毎日満席だという。考案者の一人は、京都の昆布店「五辻の昆布」の5代目店主、久世明人さん(43)だ。
北海道の昆布生産量は国内シェアの9割を占めるが、近年は年間1万トン程度に落ち込んでいる。気候変動などの影響で価格が上昇する中、約30年で7割も減ったことになる。
粉末だしなどの代替品もあるが、久世さんは昆布の魅力を多くの人に知ってもらうことで、昆布の価値を再認識してもらうことを目的にこの新事業に乗り出した。
一方、京都市伏見区にある日本料理店「京都 離宮 おだしとだし巻」では、トビウオやサワラなど4種類のだしをショットグラスで味わえるほか、好みのだしでだし巻き卵を楽しめる「だし巻き御膳」も用意されている。
和食レストランを運営する会社が、主な客層の高齢化を背景に「だしのテーマパーク」と銘打った店を2022年8月にオープンした。現在は40~50代の女性客が中心となっている。
「エンターテイメント性に反応してくれる若い世代が来てくれるので、客足が途絶えない」と、同店の広報担当、宮永智美さん(39)は話す。
「乾物から出汁を取る人が減っている中、本物の出汁の味を通じて、出汁の魅力をお客様に伝えていきたい」
71歳の料理コラムニスト、門上武志氏は、出汁が最近注目されるようになった理由について、2013年にユネスコが日本料理を無形文化遺産に登録して以来の変化だと指摘する。
「過去30年間で、だしについて知りたい、学びたいと考える人が増えてきました」と彼は語った。
楽しいことがいっぱい
だしの使い方にこだわったガイドツアーあり。2022年4月に開業した大阪市浪速区のホテル「OMO7 大阪 by 星野リゾート」では、宿泊者向けにガイドツアーを実施している。
ガイドが大阪木津卸売市場の乾物を扱う食料品店などを案内し、だしの種類やだしの取り方などについて学ぶ。
ツアーは市場が開いているときはいつでも利用できます。
「参加者の中には、自宅で使うために昆布や削り節を買ってくる人もいる。関西のだし文化を海外の人にも伝えていきたい」とガイドの八十田佳恵さん(51)は話した。
昨今、日本料理を好まない若者が目立つ。農林水産省が2020年に20~69歳の男女を対象に実施した調査では、60代の男女で「日本料理が好きではない」と答えた人は10%未満だったのに対し、20代男性では34.3%に上った。
また、昨年実施した調査では、日本の食文化の継承が課題となっており、回答者の74.6%が食文化を学ぶ機会や継承する機会が全くなかったと回答した。
料理人や食品業界関係者らで構成する非営利団体「日本料理アカデミー」は、料理人を派遣してだしの作り方を実演し、参加者に試食してもらうなど、小学校や大学に栄養教育を行っている。
「若い世代にだしのうま味を体験してもらい、日本料理の素晴らしさを知ってもらい、日本食文化を継承していきたい」と同団体の理事長で甲子園大学学長も務める伏木亨さんは話す。