ホーム Fuji 海自、機密扱いが常態化 誤解や人員不足が主因

海自、機密扱いが常態化 誤解や人員不足が主因

26
0



読売新聞
駆逐艦「霧島」の戦闘情報センター(CIC)内のコンピューター画面には、さまざまな作戦データが表示されている。

国家安全保障に関わる機密情報とされる「特定秘密」の違法な取り扱いが海上自衛隊で常態化しているようだ。

こうした不正行為は、特定秘密保護法の解釈ミスが主な原因だが、慢性的な人材不足という構造的な要因も浮上している。

このままでは、防衛力の抜本的強化に欠かせない国民の信頼を損なうだけでなく、同盟国や友好国の信頼も揺るがしかねない。防衛省は早急に組織の立て直しを図らなければならない。

駆逐艦の中枢

金曜午前、海上自衛隊の坂井亮幕僚長は防衛省で臨時記者会見を開き、深々と頭を下げた。

「船上では特定秘密を扱う人とそうでない人が隣り合って働いている。定義が曖昧なまま、情報を守る体制を維持するのが難しかった」 [of the unauthorized disclosure of information] 酒井氏は「船員の間で十分に周知されておらず、乗組員を巻き込んだ多くの事故を引き起こした」と述べた。

特定秘密の不正取扱い事件58件のうち38件は水上部隊による組織的な犯行だった。

関係者によると、作戦指揮を司る戦闘情報センター(CIC)のコンピューター画面には潜水艦の航跡情報などの特定秘密が表示され、担当者同士の会話にも秘密が含まれているという。

しかし、特定秘密を扱う資格を持たない職員が、海図の整理や機械の修理などの業務で、CICに出入りすることが日常的であった。

秘密保持規定違反の一例は昨年11月に起きた。東アフリカのソマリア沖アデン湾で海賊対処任務に就いていた護衛艦「あけぼの」艦上で、CICが緊張状態にあると非難されたのだ。

この頃、沿岸国イエメンからアデン湾方向にミサイルが発射される事件が発生しており、「あけぼの」が攻撃を受ける可能性も否定できない。

CICで働く全員が情報を共有する必要があると判断した指揮官は、指定秘密を含む情報を大型スクリーンに表示させた。しかし、たまたまCICにいた隊員の1人は機密情報取扱資格の審査を受けていなかった。捜査の結果、この件は「不正な情報漏洩」と判断された。

トレーニングは行われない

特定秘密保護法では、「あけぼの」で起きたような資格のない隊員が特定秘密を知るという事件だけでなく、資格のない隊員が特定秘密を表示するモニターに近づくなどして「知ることのできる立場」にいること自体も違法とされている。

護衛艦内で不正な情報漏えいが相次いだ背景には、海自幹部らが違法性を認識していなかったことがあり、海自内では関連する訓練が行われていなかった。

特定秘密に関わる制度を所管する防衛省内部局は、不正開示の定義は把握しているが、今回の調査まで海自の不正行為は把握していなかったとしている。約200人の海自隊員が不正な状況で特定秘密に接触したとみられる。

関連する問題として、海自の人員不足がある。

護衛艦「せとぎり」では、中央情報センターで特定秘密の取り扱いを担当していた「運用担当」が他の艦艇に異動となり、不適格な人物が中央情報センターの業務を引き継ぐことになった。

新人は特定秘密に関わる業務には従事していなかったが、秘密に触れることになり、「情報不正開示」に該当すると認定された。

海自の欠員補充率は93.3%にとどまり、運用の専門人材の不足がこうした事件が起きる原因とみられている。

全員検査

海自は、CICに出入りする隊員全員にセキュリティクリアランス取得を義務付ける方針だ。新たに2千人程度がセキュリティクリアランス審査を受けるとみられる。防衛省の担当者は「現在は資格のない隊員のCICへの立ち入りを禁止している。業務に支障がないとは言えない」と話す。

同省は、同様の事故を防ぐため、警備区域への入退出を集中管理し、人為的ミスをなくすシステムの構築を目指している。

笹川平和財団安全保障研究部長の川上康弘元海軍少将は「まずは再発防止策をしっかり進めてほしい」と語る。

「海自の任務が拡大する一方で、必要な人材が十分に入隊していない。不祥事があるたびに規定を作り、仕事が増えるという悪循環に陥っている。抜本的な改革で現場の負担を軽減すべきだ」とも語った。



もっとニュース

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください