ホーム Fuji 能登地震で亡くなった飼い主を今も待つ猫。娘が猫の信頼を勝ち取ろうと奮闘

能登地震で亡くなった飼い主を今も待つ猫。娘が猫の信頼を勝ち取ろうと奮闘

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読売新聞
高林秀子さんは6月19日、石川県輪島市で亡くなった母親の飼い猫「メイ」の世話をしている。

石川県輪島市 — 能登半島を襲った大地震から半年が経ったが、一匹の三毛猫は依然として被害を受けた家から出ようとしない。メイと名付けられたこの猫は、地震で亡くなった飼い主と約10年間その家で暮らしていた。

石川県輪島市出身のパート従業員、長女の高林秀子さん(66)は、毎日車で通って猫に餌をやる。猫が心を開いてくれることを願い続けている。

「こっちに来て、ご飯を食べなさい」。6月中旬、自宅から車で20分ほど離れた母親の家に到着した高林さんはメイさんに声をかけた。静かに「ニャー」と鳴き、側溝の隙間から猫が現れた。高林さんが紙皿に乗せた餌を差し出すと、メイさんはカツカツと食べた。


Courtesy of Hideko Takabayashi
能登半島地震で亡くなった上野一恵さん

高林さんは元旦、当時86歳だった母の上野一恵さんを訪ねた。「明日、旦那さんと一緒に戻ってきなさい」と母は高林さんに言った。そして高林さんが帰った後、地震が起きた。母の家は「全壊」と発表されたが、かろうじて持ちこたえていた。一恵さんは避難中に近くの建物が倒壊し、亡くなった。

犬も猫も大好きだった和枝さんは、夫を亡くした後、知人からもらった猫のメイを大事に育てた。「私が食べなくても、メイには食べさせてあげないと」と、畑に行くときも草取りに行くときも、メイは和枝さんのそばにいた。夜になると、丸まって一緒に眠った。

震災後、高林さんは実家に帰るのに苦労した。母が亡くなった場所を通るたびに胸が張り裂けそうになった。しかし、震災から1カ月半ほど経ったころ、知人から「メイを見た」と声をかけられた。ちゃんと餌を食べているのか心配になり、思い切って探しに行った。

メイは最初、とても人見知りで隠れていた。高林さんがようやく猫の姿を見ることができたのは3月末のことだった。何度もメイに声をかけると、瓦礫の中から猫が現れた。お腹を空かせていたようで、高林さんが持ってきた餌を全部食べてしまった。メイはすぐに逃げてしまったが、高林さんはメイに会えてうれしかった。「きっと母が猫を残してくれたんだ」と高林さんは思った。

メイは高林さんが持ってきた餌を食べるが、食べ終わるとすぐに去ってしまう。高林さんは、猫が自分ではなく母親を待っているようだと言う。「私を世話してくれたおばあちゃんはどこにいるの?」と猫が聞いているように感じる。しかし、メイはおかわりをねだるようになり、仰向けに寝転ぶこともある。高林さんが触ろうとすると、メイは固まってシューッと鳴いたり逃げ出したりしてしまうが、高林さんはいつかメイを家に連れて帰りたいと願っている。

7月1日、和枝さんの誕生日、高林さんは母の写真の前に花を捧げ、座り込んで母に話しかけた。「メイは私のことが好きじゃないの。お母さん、メイに私を信じてと伝えて」と彼女は言った。



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