2024年7月10日 16時16分(日本時間)
使用済みプラスチックのリサイクルへの取り組みは世界的に重要性が高まっており、日本でも官民一体となってリサイクル技術の研究開発を加速し、世界をリードしていくことが期待されます。
政府は、再生プラスチックの利用促進に向け、プラスチックを大量に使うメーカーに再生プラスチックの使用目標の設定や使用量の定期的な報告を義務付ける方針を打ち出した。取り組みが不十分な場合は、改善を勧告したり命令したりする方針だ。
対象業種は包装・容器、自動車、電気電子機器などとみられ、政府は来年の通常国会で関連法を改正したい考えだ。
製品や資源をできるだけ長く使い、廃棄物をできるだけ減らす循環型経済への移行は世界的な課題であり、政府のリサイクル推進策は適切だ。
政府の取り組みは脱炭素化の面でも意義深い。使用済みプラスチックの約70%は発電用の燃料として焼却され、二酸化炭素を排出している。そのため、使用済みプラスチックをリサイクルすることは、CO2排出量の削減につながる。
リサイクル材料の利用は国際的にも勢いを増しており、成長産業としても位置付けられています。
スイスのネスレや米国のマイクロソフト、アップルなどの企業は数値目標を掲げ、リサイクルの取り組みを強化している。欧州連合(EU)は2030年ごろ、新車のプラスチックの少なくとも25%をリサイクル材で作ることを義務付ける計画だと報じられている。
世界的に環境意識が高まる中で日本企業が遅れをとれば、競争力が低下しかねない。
現在、日本では使用済みプラスチックのリサイクル率は約25%にとどまっており、拡大の余地は大きい。
課題は、使用済みプラスチックをリサイクルする際、その過程で不純物が混入し、品質や耐久性が劣ることだ。また、工程の複雑さやリサイクルプラスチックの価格の高さも普及の妨げになっているという。
このため、化学メーカーや自動車業界などはリサイクルプラスチックの品質向上に取り組んでおり、政府もこうした研究開発を後押しする必要がある。
日本のリサイクル技術は海外でも注目されています。
昨年、日本のスタートアップ企業がアラブ首長国連邦に、ペットボトルなどを化学的に分解して原料として再利用するリサイクル工場を建設することに合意した。こうした事例が増えれば、日本企業のビジネスチャンスが広がり、国際社会に貢献できるだろう。
そもそもプラスチックの使用量を減らすことも重要であり、石油を原料としない代替素材の開発に努めることが期待されます。
(読売新聞2024年7月10日号より)