2024年6月18日 6:00 JST
新型コロナウイルス感染拡大による世界的な半導体不足を受け、政府はサプライチェーンの強化と経済の安全保障に向け、企業などに半導体の国内生産拡大を促しており、全国各地で半導体関連産業の工場建設計画が打ち出されている。
半導体産業は幅広い業種から支持されており、自治体もこうした取り組みによる波及効果を期待している。
建設ブーム
北海道の玄関口、新千歳空港の東側の一画に最近、クレーンが立ち並んでいた。東京に本社を置く半導体メーカー、ラピダス社の工場が急ピッチで建設されているのだ。
ラピダスは2022年に設立され、日本の大手企業からの出資を受けています。また、中央政府からの財政支援も受けています。
ラピダスは昨年2月、回路線幅2ナノメートルの次世代半導体を量産するため、北海道千歳市に工場を建設すると発表した。来年4月にも試作ラインを稼働させ、2027年の本格稼働に備える。
工場稼働後は千歳市に従業員約1000人が住む予定で、市中心部にはマンションの建設が進んでいる。23年度の市内のマンション建築許可は約40件で、前年度の2倍以上となった。
「台湾積体電路製造(TSMC)の進出を機に熊本県で建設ラッシュが続いているのを見て、北海道進出を決めた」と千歳市で賃貸マンションを建設中の福岡市の不動産開発会社ウェルホールディングスの大塚正弘社長は語る。
工場建設により清掃や警備などの雇用も生まれ、関係ビジネスなどの窓口となっている千歳商工会議所にはラピダスに関する問い合わせが多数寄せられている。
市外に拠点を置く事業者で構成される同会議所の特別会員は、2023年3月末の26社から2024年3月末には46社に増える。
地価も高騰している。国土交通省が発表した3月時点の公示値によると、住宅地価の上昇率が最も高かった全国10地点のうち4地点が千歳市だった。
地価上昇率が最も高かった商業用地10区画のうち3区画も市内にあった。
「資材費の高騰もあり、一般の人が市内で不動産を購入するのは難しくなってきている」と不動産会社社長は語った。千歳市の横田隆一市長は5月、宅地不足にならないよう、必要に応じて継続的に宅地供給したいと発言した。
新たに設置された役職
台湾の大手半導体受託製造会社、パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング(PSMC)は、東京に本社を置く大手証券会社SBIホールディングスと提携し、宮城県大衡村に2027年に新工場を稼働させる計画だ。
大衡村にはトヨタ自動車東日本株式会社があり、周辺には自動車関連企業が多数立地しています。自動車産業と半導体産業は共通点があることから、周辺自治体では半導体産業を支援する部署や職位を新設するなど、チャンスを活かす取り組みが進んでいます。
宮城県は12月に7人体制で半導体産業の振興を図る室を設置し、5月2日には村井嘉浩宮城県知事がPSMCが台湾に建設した新工場の開所式に出席した。
村井氏は、大平工場のモデルとなる新工場の規模に感銘を受けたようだ。同氏は「県内の半導体産業に大いに支援していかなければならない」と語った。
仙台市も6月1日付で半導体関連産業を担当する課長職を新設。早ければ7月にも仙台市内に工場事務所を開設することを視野に、関連企業の誘致に向けた調査や営業活動を推進する。
「市の経済効果を最大化したい」と市役所の後藤智之課長は語った。
釧路公立経済大学の中村健治地域経済研究センター長は「自治体は半導体産業と関係の深いIT企業の通信インフラ整備など関連産業の誘致策に注力すべきだ」と指摘。
「国内外から優秀な人材が流入してくると、彼らが家族と暮らしやすい街づくりも必要になる。これは、関係地域の教育や余暇活動などの質を向上させる絶好の機会だ」と中村氏は語った。