2024年6月4日 16時48分
東京(ロイター) – 日本は来年発表予定のエネルギー政策の見直しで、需要の増大と地政学的リスクの高まりに直面し、安定した電力供給を目指して原子力発電の増設を推進する予定だが、業界の専門家によると、目標達成は困難になる可能性が高いという。
日本は2011年の福島原発事故後、原子力発電への依存を大幅に削減し、2050年までに炭素排出量を実質ゼロにするという目標を掲げながらも、電力の70%を発電するために化石燃料の使用を増やした。
しかし、ロシアのウクライナ戦争により2022年に石炭とガスの価格が急騰し、供給が途絶える事態に直面した政府は、安定したエネルギー供給を確保するため、風力や太陽光発電とともに原子力エネルギーの利用を拡大したいと考えている。
「重点は炭素排出からエネルギー安全保障に移った。エネルギー安全保障は日本にとって常に重要だったが、液化天然ガスの不足、高価なLNG、供給不足など多くの課題があるため、現在はさらに重要になっている」とコンサルタント会社ウッド・マッケンジーのアレックス・ウィットワース副社長は語った。
世界第2位のLNG輸入国であり、火力発電用石炭の主要買い手である中国が原子力発電の増強に転じれば、オーストラリア、カタール、米国、インドネシアなど化石燃料の輸出国に打撃を与えることになる。
3年ごとに見直す日本のエネルギー政策の議論が先月から始まった。岸田文雄首相が2022年に原発重視の姿勢に転換して以来、初の見直しとなる。
「政策を議論する委員会の委員の圧倒的多数は原子力推進派であり、新しい政策には新しい原子炉の建設が含まれる可能性がある」と国際大学の橘川武夫学長は述べた。
2030年のエネルギーミックス目標である原子力20~22%が、次の目標年である2040年にどのように変化するかは不明だ。しかし、地政学的緊張によりエネルギー供給の混乱や電力価格高騰のリスクが高まる中、エネルギー会社や産業界は原子力発電のさらなる利用を求める声を強めている。
日本最大の原子力発電事業者である関西電力9503.Tは「エネルギー安全保障と脱炭素化のために原子力発電を最大限に利用すること、また増大する電力需要を満たすために原子炉の交換と新設の必要性について、次期エネルギー計画で明確にすることを求めます」と述べた。
政府は、半導体製造工場やデータセンターからの需要増加に伴い、2050年までに電力生産量を最大50%拡大する必要があるかもしれないと述べている。
困難な仕事
規制上のハードル、国民の反対、高コスト、大地震、長期にわたる開発期間のため、原子力発電で増大する電力需要を満たすのは困難だろうと学者やエネルギーアナリストらは指摘する。
吉川氏は、地元住民の反対や既存の原子炉の再稼働に対する規制当局の承認の遅れにより、同国は2030年の原子力発電の目標に届かず、わずか15%にとどまる可能性が高いと述べた。
過去に原子力発電所の建設に数十年かかっていることを考えると、2050年までにも新たな原子力発電能力を追加するのは困難かもしれないと彼は述べた。
同氏とウッドマックのウィットワース氏は、石炭火力発電とLNG火力発電を合わせて2030年までに39%に削減するという政府の目標に反し、火力発電で供給不足を補わなければならない可能性が高いと述べた。
「原子力発電の目標は最も非現実的だ。再稼働には地元の同意を得る必要があるため、その目標を達成できるかどうかは政府の手に負えないからだ。だから石炭とガスには大きな利点がある」とウィットワース氏は語った。
日本はエネルギー政策を見直し、2035年以降の温室効果ガス排出削減目標を設定し、来年初めまでに2040年に向けた脱炭素戦略を策定する予定だ。
再生可能エネルギーの成長を加速し、化石燃料の発電を削減することで、これらの目標を達成し、価格を下げることに貢献します。
「日本経済は過去2年間、化石燃料価格の高騰で大きな打撃を受けた」と東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は語った。
政府のエネルギー政策委員会委員である高村氏は、日本は石炭火力発電所を段階的に廃止するロードマップを示すべきだと述べている。
「再生可能エネルギーによる国内エネルギー生産を促進することは国益だ」と彼女は述べ、脱炭素化の要素で評価される日本企業の競争力が向上するだろうと付け加えた。