ホーム Fuji 9月の混乱した自民党総裁選で麻生氏と菅氏が重要人物となると予想される

9月の混乱した自民党総裁選で麻生氏と菅氏が重要人物となると予想される

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読売新聞ファイル写真
右から左へ:麻生太郎自民党副総裁、岸田文雄首相、茂木敏充幹事長、菅義偉前首相が1月の党会合に出席。

自民党の「政治とカネ」問題が渦巻く中、6月23日に閉会した通常国会では政治改革が主要議題となった。内閣支持率の低下が続く岸田文雄首相は、他党の要求を多く受け入れながら政治資金規正法改正案を成立させ、国民の信頼回復を図った。だが、法案成立と引き換えに、岸田首相は何か大切なものを手放したのかもしれない。

岸田氏は、政権発足当初から首相を支え、事実上の親のような存在だった有力政治家、自民党副総裁の麻生太郎氏の支持を失ったようだ。麻生氏は岸田氏と常に同じ政治的見解を共有していたわけではない。例えば、麻生氏は自民党の派閥解体の決定に反対し、自身の派閥を維持した。それでも麻生氏は辛抱強く、できる限り岸田氏を支えようとした。

麻生氏は、2008年から2009年にかけて首相を務め、国民の強い反対に直面した経験から、その地位に留まることがいかに難しいかを知っている。同氏はかつて、首相にかかるプレッシャーを「どんよりとした黒い孤独」と表現した。しかし、麻生氏の忍耐は、同氏の反対を押し切って他党の要求を満たす法案を成立させた岸田氏に対して尽きたようだ。麻生氏は非常に不満を抱いているようで、6月初旬には岸田氏からの会食の誘いを断ったこともあった。

麻生氏が岸田氏と距離を置くようになると、自民党議員らは首相の辞任を公に求め始めている。麻生氏とともにこの動きに加わっているのが、もう一人の政治勢力、菅義偉前首相だ。6月23日、菅氏は岸田氏の後任として、9月に予定されている自民党総裁選で新総裁を選ぶべきだと公言した。麻生氏と異なり、菅氏は岸田氏が総裁に就任して以来、現政権と距離を置いている。菅氏は2020年から2021年の任期中も不人気首相で、2021年9月に総裁選に出馬しようとした際、岸田氏が対抗馬として出馬を表明。結果的に菅氏は再選の道を失い、断念せざるを得なかった。議院内閣制では、与党のリーダーが首相に選ばれるのが一般的だ。

3年後、岸田氏は菅氏と似た状況に陥っている。岸田氏が因果応報を信じているかどうかは分からないが、菅氏は現在、ポスト岸田候補たちとより積極的に接触している。

読売新聞など複数の調査によると、自民党の政治家で国民に最も人気の高いのは石破茂氏だ。政策通で防衛大臣や幹事長を務めた石破氏は、党外では人気があるが、同僚からは不人気だ。2012年9月の総裁選で、当時国民の間でも最も人気のあった石破氏を安倍晋三氏が破ったことからもわかるように、自民党には党首を選ぶ独自の論理がある。総裁選の投票者はもっぱら党員、主に国会議員で、友情、忠誠心、義理などを優先する。石破氏は、党が国民の厳しい批判にさらされた際に一度離党したが、後に復帰。麻生氏が首相だったころは、閣僚だったにもかかわらず、麻生氏の辞任を要求。安倍政権下では、野党に負けず劣らずメディアで首相を批判した。 こうした過去の行為が自民党議員らに完全に忘れ去られているとは考えにくい。

小泉進次郎氏は、小泉元首相を父に持ち、国民に2番目に人気の高い候補者だ。環境大臣を務めた経験はあるが、党の幹部職に就いたことはない。首相になるには経験不足が懸念される。河野太郎氏も有力候補だ。外務大臣や防衛大臣を務めた経歴があり、国際的にはよく知られている。しかし、国内では自民党議員としては珍しく、強力な政治改革論者として知られ、むしろ政界の異端児とみなされている。菅氏は、小泉氏や石破氏も含まれていた2021年総裁選で、岸田氏に対抗して河野氏を支持した。河野氏は現在閣僚で、麻生派に所属している。報道によると、菅氏は、河野氏が麻生派を離脱せず、過去の総裁選で麻生氏の支持を得られなかったことに不満を抱いているという。

経済安全保障担当大臣の高市早苗氏も野心的だ。彼女は2021年の総裁選に安倍首相の支援を受けて出馬したが、安倍首相抜きでどれほどの支援が得られるかは不明だ。岸田派に属していた外務大臣の上川陽子氏も有力候補として噂されているが、岸田氏が再選を目指す限り、彼女はあまりに従順すぎるため出馬しないだろう。

自民党幹事長の茂木敏充氏は首相就任を公言している。麻生氏や菅氏とも定期的に会っており、岸田氏に解散を迫られた派閥の元代表でもある。菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信氏も有力候補だ。しかし、茂木氏と加藤氏に共通する最大の弱点は国民の支持率が極めて低いことだ。次期総裁の重要な課題は、首相として衆院解散を行い、その後の総選挙で勝利して自民党政権を維持することであり、茂木氏と加藤氏の支持率の低さは大きな障害となる。党の刷新をアピールするため、総裁選でニューフェイスを投入する動きもある。

候補者名簿を見ると、国民や党員が一致して「ポスト岸田候補」と認める人物はいないようだ。麻生氏や菅氏が誰を支援するつもりなのかも不明だ。

もちろん、岸田氏が奇跡的に支持を集めて再選される可能性がないわけではない。同首相は逆境に強いことで知られている。人気タレントを閣僚に起用する内閣改造は、政権が支持回復を図るためによく使われる手法だ。しかし、読売新聞の最新世論調査で支持率が過去最低の23%に落ち込んだ岸田氏に内閣改造を行う力はなさそうだ。

総裁選で支持回復に失敗すれば、野党への政権交代が現実味を帯びてくる。しかし、自民党はかつて社会党出身者を首相に据えた強硬派。再び野党になることは避ける構えだ。

2009年に自民党が政権を失ったときに首相を務めた麻生氏と、党の選挙対策本部幹部として彼を支えてきた菅氏は、特にその点では覚悟が固いだろう。菅氏は最近、「野党に政権を渡すことは絶対に許されない」と発言している。自民党の未来の鍵を握るこの2人が、9月の総裁選で誰を選ぶのか、注目が集まる。国会は閉会中だが、自民党内では忙しく、政治的に白熱した夏が待っている。

Political Pulse は毎週土曜日に掲載されます。




Yuko Mukai

向井裕子は読売新聞ワシントン特派員。




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