ホーム Fuji 2050年の日本:ライフスタイルの変化 / 限界を超えて:東京の研究者が身体的、知覚的障壁を打ち破る技術を開発

2050年の日本:ライフスタイルの変化 / 限界を超えて:東京の研究者が身体的、知覚的障壁を打ち破る技術を開発

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読売新聞
ALS患者の武藤正胤さん(左)は、東京で脳波でロボットアームを動かして吉藤オリさんと握手している。

これは、2050 年の日本がどのような姿になっているか、国民としてどのように課題に立ち向かうか、そしてどのような社会を実現したいかを探るシリーズの第 2 回目です。

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「握手しましょう」。4月中旬、脳波でロボットアームを動かす実験が東京で行われた。被験者となったのは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の武藤正胤さん。握手を告げると、彼は目を閉じた。

約30秒間集中すると、頭と耳に取り付けられた10個の装置が脳波の活動を捉えた。その後、肩に取り付けられたロボットアームがゆっくりと動き、ロボット研究者の吉藤オリィさん(36)と握手した。

「よかった」と誰かが言った。「完璧だ!」と別の人が言った。武藤は彼らの歓声に笑顔で応えた。「私の命令で、私の能動的な腕が動いたんです」と彼は言った。

武藤さんは11年前に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。気管切開手術を受けた後、全身の筋肉が萎縮し、話すこともできなくなった。「テクノロジーは身体機能を補うだけでなく、拡張し、活動範囲を広げてくれます」と武藤さんは言う。

話すときは、目の動きを追跡するシステムを介して言いたいことを入力すると、コンピューターの音声で言葉が出てくる。デジタルで音楽を作ったり、アバターを使って海外のオンラインイベントに参加したりしている。

昨年秋、体外受精で娘が誕生した。ロボットアーム実験の成功は、武藤さんに大きな希望を与えたと語る。「病気が進行しても、妻や娘に手を伸ばして触れることができる。将来への希望がさらに強くなりました」

「最終的には脳波で電動車椅子を操作して外出できるようになるはずだ」と吉藤氏は言う。

ロボットや情報通信技術を活用して身体能力や知覚能力を拡張する技術「人間拡張」は、人が望むような生活を送るための手段として注目されている。

人間拡張とは、ロボット工学や情報通信技術を使って身体能力や知覚能力を拡張する研究で、人々がより豊かな生活を送るための手段として注目を集めている。

内閣府が2020年に開始したムーンショット型研究開発制度では、2050年までに実現すべき10の目標の一つに「身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会」を掲げている。

人間機能が高度に拡張された将来においては、寝たきりの人がロボットを遠隔操作したり、個人とデジタルアバターが同時に異なる場所で作業したりすることが当たり前になるかもしれません。

「誰もがもう一つの身体を持ち、自分らしく充実した人生を送ることができるようになる」と、遠隔で触覚を共有する技術開発に携わる慶応大学の南沢孝太教授は言う。

米アップルが2月に発売したヘッドセット「ビジョンプロ」は、個人の活動範囲や役割を拡大し、人口減少に伴う問題の解決にも役立つツールとなるかもしれない。

このデバイスは、目と手の動きで操作する空間コンピューターと呼ばれるもので、装着すると、現在いる空間と仮想世界が融合し、例えば、現実世界では料理をしながらオンラインで会議に参加するなど、複数の作業を同時に行うことが簡単にできる。また、部屋に月面の光景を重ねて、疑似宇宙旅行を楽しむこともできる。Vision Proは、日本で6月下旬に発売された。

「多くのものや活動を省くことで、本当にやりたいことに集中できるようになる」と、東京に拠点を置くIT企業スタイリーの最高執行責任者で、事業構想大学院大学の教授である渡辺信彦氏は言う。「一日の時間、そして一度きりの人生は、今とは比べものにならないほど濃密になるだろう」

テクノロジーは着実に未来へと進んでいます。しかし、新しいテクノロジーが実用化されるまでには、倫理的な問題や関連法の制定など、解決しなければならない課題が数多くあります。

三菱総合研究所の藤本篤也氏は「技術革新は人口減少に伴う労働力不足を補う可能性がある。最も重要なのは、個人がどう行動し、何を達成しようとしているかだ。望む未来を思い描く能力だ」と語った。



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