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高齢者の労働災害:身体機能の低下を考慮

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高齢者の就労が進むなか、労働災害も増加しています。誰もが安心して働ける職場環境づくりに、官民一体となって取り組んでいきたいと考えています。

昨年の65歳以上の就業者数は過去最高の914万人となり、この20年でほぼ倍増した。人手不足を背景に定年延長や定年後の再雇用を導入する企業が増え、意欲のある高齢者が働きやすくなったことが影響しているとみられる。

しかし、昨年、労働災害により死亡または負傷した60歳以上の高齢者は3万9702人と過去最多となり、8年連続で増加している。

60歳以上の高齢者は全労働者の18.7%を占めるが、労働災害に遭った人の29.3%を占めている。加齢による身体機能や筋力の低下が労働災害に遭う可能性を高めている可能性がある。

政府の推計によると、2040年には60歳以上の労働力人口が全労働者の3割近くにまで達するとみられ、高齢者の労働災害対策が急務となっている。

60歳以上の労働災害で最も多いのは「転倒」で、次いで「高所からの転落」「不規則な動作」となっている。職場のちょっとした段差につまずいたり、こぼれた水や油で滑ったりすることが目立つ。

高齢者がケガなどで長期間仕事を休むと、人手不足の企業にとっては損失となる。

高齢者を雇用する企業には、床に必要以上に物を置かない、重いものは2人以上で運ぶなど、基本的な予防策を講じてほしい。

高齢労働者は定期的に自身の体力を把握しておくことも重要です。

鉄鋼大手のJFEスチールは、主に工場で働く従業員が片足で目をつぶって立つ時間や歩幅を測定し、転倒の危険性を等級分けして労働災害防止に努めている。

政府はこうした取り組みを導入し、拡大する必要がある。

高齢者の労働災害が増加する一方で、高齢者の過労死は労働災害として認定されにくいとの指摘がある。

そもそも高齢者の労働時間は短くなる傾向にあるが、労働基準法に基づく協定では、発症前1カ月の残業時間が「おおむね100時間」を過労死の危険ラインと定めている。

そのため、労働時間が短い高齢労働者は危険ラインに達しないケースが多い。

高齢者と現役世代に同じ過労死の危険ラインを当てはめるのは適切とは言えない。高齢者の労働災害は、時間外労働の量だけではなく、労働条件や労働量に応じて個別に判断し、柔軟に認定すべきだ。

(読売新聞2024年7月26日号より)



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