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関西地方の美術館が改修工事を終えて再オープン、多くの建物は現代化への対応が必要

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読売新聞
大阪市北区のリニューアルした大阪市立東洋陶磁美術館

関西各地の美術館が老朽化した施設の改修・補修工事を経て、再開している。

これらの美術館はすべて、美術館建設ブームが起きた1980年代から1990年代にかけて建てられたもので、リニューアル後は趣向を凝らした展示で再び来館者を迎えています。

大阪市北区に1982年に開館した大阪市立東洋陶磁美術館。老朽化のため2022年に閉館し、4月にリニューアルオープンした。エントランスホールはガラス張りの開放的な空間となり、展示室には自然光の色に合わせた特殊なLEDを導入し、陶磁器の魅力を引き立てている。

現在開催中の企画展「特別展 リニューアルオープン!大阪市立東洋陶磁美術館」では、新環境で同館の優れたコレクションを一堂に展示。鉄褐色の斑点と光沢のある緑色の釉薬で飾られた14世紀元代の青磁瓶など国宝を含む名品約380点を展示。


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12~13世紀の南宋時代の茶碗が大阪市立東洋陶磁美術館に展示されている。

同じく国宝に指定されている南宋時代の12~13世紀の茶碗「銀斑天目茶碗」も展示されている。同館の代表作で、茶碗の内側を照らすスポットライトをあしらった専用ケースに展示されており、どの角度から見てもまだら模様の美しさを堪能できる。

同美術館の学芸員、小林仁さんは「時代の変化に合わせた展示方法を採用した。来館者に作品をよりリアルに体感してもらいたい」と話した。

展覧会は9月29日まで開催される。

和歌山市にある和歌山県立近代美術館も春に営業を再開した。建築家黒川紀章氏が設計し、1994年に完成したこの美術館は、エレベーターの1つがガラス製であるなど、改修のため4か月間休館した。エントランスホールにあるこの美術館の革新的な構造設計により、ガラス製のエレベーターの利用者は内部を見ることができる。

同館では6月末まで「土が拓く未来 陶芸の革新的表現」展を開催。関西を中心に戦後の前衛陶芸の軌跡をたどり、オブジェによる斬新な表現の先駆者・林泰雄さんや、巨大な球体作品で知られる南野薫さんなど30作家による約110点の作品を展示。京都の前衛陶芸集団「紫光会」や「走泥社」などの技法や素材を出発点に、他ジャンルの影響を受けながら先駆的な作品を生み出していった。


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左は南野薫氏の作品。和歌山県立近代美術館で展示されている。

同美術館の学芸員、奥村康彦氏は「表現の多様性は、作家たちが陶芸に真剣に取り組んでいたことを示している」と話す。

滋賀県立美術館(滋賀県大津市)は、昨年12月から空調設備の改修のため休館していたが、4月に再オープンした。同館は1984年に開館し、2016年に公立美術館として初めて、美術教育を受けていない人や障害のある人が作った作品「アール・ブリュット」を収集する方針を掲げた。また、カフェや子ども向けの施設を整備するため、2017年から2021年まで4年間休館していた。

再開後は、同美術館のコレクション方針をアピールする企画展「日本のアール・ブリュット作家45人の創造の冒険」を6月23日まで開催。2010~11年にパリで開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」展で展示された約450点の作品で、日本のアール・ブリュット界の評価を高めた革命的な作品とされている。

展示作品の中には、精神病院に長期入院していた山崎健一さんの「鶴の船」もあった。方眼紙に重機や植物を鮮やかな色彩で丁寧に描いた。


提供:ボーダレス・アート・ミュージアムNO-MA
山崎健一作「鶴の船」(日本財団所蔵)。撮影:大西信夫

建設ブーム

近年、全国の美術館で改修工事が相次いでいる。その多くはバブル経済期の1980年代半ばから1990年代前半に開館した美術館だ。高知県立美術館の館長で、全国美術館会議の美術館運営研究会幹事も務める安田篤夫さんは、この時期を「美術館建設ラッシュ時代」と呼んでいる。

博物館の建物の多くは老朽化が進み、空調設備など保存に欠かせない設備も劣化が進んでいます。収蔵品や資料が増えるにつれ、作業スペースはますます狭くなってきています。博物館も時代の変化に合わせて新しい照明やデジタルサイネージを導入することが求められています。

安田氏は、工事のため美術館の全部または一部を閉鎖せざるを得ず、国内の他の地域でもしばらくはこの状況が続くと予想されると述べた。



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