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里親制度:深く傷ついた子どもたちに温かい環境を提供

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実親による養育が難しい子どもは全国で4万人を超え、2016年には児童福祉法が改正され、児童養護施設などによる集団養育が主流だったが、里親などによる家庭養育を優先する原則が明記された。

里親制度は、子どもを受け入れたい家庭が事前に自治体に登録し、子どもを託されて養育する仕組みだ。

里親制度は養子縁組と異なり、法律上の家族関係を前提としない。子どもの養育期間は個々の事情によって異なる。養育費は公費で賄われる。登録世帯数は年々増加し、2021年度は約1万6千世帯。今後も着実に増加していくことが期待される。

国は、養護を必要とする乳幼児の75%、学齢児童の50%をこうした家庭に受け入れることを目標としているが、実際の受け入れ率は養護を必要とする児童の20%程度にとどまっている。

里親の多くは比較的幼い子どもを希望し、自治体の要請と合わないことなどが背景にある。また、登録家庭の間でも、実子との年齢差や性別で受け入れの可否を決める傾向がある。

総務省は6月、里親経験のない里親が、養育を必要とする子どもを数日間預かる「短期委託」など、子どもを受け入れやすい環境を整備するよう子ども家庭庁に勧告した。里親経験を得ることで、より幅広い子どもを受け入れられるようになることが期待される。

里親希望者の半数は共働き世帯で、こうした家庭が子どもを受け入れる場合は保育施設を優先的に利用できるルールがあるが、自治体がルールを知らず、子どもの受け入れを断念する家庭もあった。

里親の多くは、受け入れた子どもと良好な関係を築けず困っている。里親を支援する体制の整備が必要である。

新潟市は、里親希望者向けの説明会や、実際に子どもを受け入れた里親への相談窓口の設置などにより、受け入れ率を50%台に維持している。

民間福祉団体などとの連携も重要だ。自治体は短期間で人事異動を行うことが多いが、民間ならより長期的な支援が期待できる。各自治体は実情に合わせた支援体制を模索すべきだ。

子どもを取り巻く環境は近年悪化している。児童相談所が対応する虐待件数は22年度に過去最多の約22万件に達した。経済的に困窮する子どもも増えている。心の傷を抱える子どもや、そうした子どもを育てる里親を孤立させてはならない。

(読売新聞2024年7月7日号より)



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