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通常国会閉会:法案可決は成功も政治不信は残る

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政府提出の重要法案は順調に成立したが、「政治とカネ」問題は解決せず、政治不信は払拭できなかった。政府、与野党の責任は重い。

通常国会が事実上閉幕した。今国会で政府が提出した62法案のうち、洋上風力発電の設置海域拡大などを除く61法案が成立した。

重要な経済安全保障情報を扱う人物を認定する「セキュリティ・クリアランス制度」を創設する法案は、個人の経歴調査を伴うため、プライバシーの侵害だと一部から批判されている。

しかし、自民党と公明党の連立与党に加え、立憲民主党、維新の党、国民民主党など他の政党も法案に賛成票を投じた。

国際社会では、サイバー関連技術や人工知能など民間の先端技術の軍事転用が急速に進み、機微情報の保護も喫緊の課題となっている。野党の間でもこうした認識が広がっていると考えられる。

自民党と民主党は、緊急事態に国が自治体に指示を出せるようにした改正地方自治法にも賛成している。野党が批判だけに終始せず、本質的な課題を直視し、与党と連携する姿勢を見せているのは注目に値する。

重要法案が成立すれば内閣の功績となるはずだが、岸田内閣の支持率は低迷が続いている。政治資金問題の影響が大きいのは間違いないが、その対応のまずさが政治不信を増幅させた可能性もある。

東京地検特捜部が安倍、二階両派に加え、首相が率いる岸田派も立件する可能性が高まったころ、岸田氏は突如、派閥の解散を宣言した。

政治資金規正法改正案の草案作成は当初、自民、公明両党の実務家議員に委ねられていたが、岸田氏は両党首との個別会談で公明、維新両党の提案をほぼ全面的に受け入れることで急場をしのいだ。

首相は実務家らの判断を超えた決断を下す必要があるが、事前に意図を説明せずサプライズを狙ったとみられる対応に出たことで、国会での改正案の取り扱いに混乱を招いた。

首相が政権の危機を乗り越えるには、政党と連携して政治を安定させることが不可欠だ。

野党も衆院選を意識し、自民党が政治資金問題に消極的であるという印象を与えることにばかり注力した。

政治資金は与野党の政治活動を支える共通の基盤である。政治資金の取り扱いを監視する第三者機関の設置など、未解決の問題は山積しており、各党が早急に議論し、実効ある結論を出す必要がある。

内外に解決すべき課題は山積している。与野党は国会閉会中の審議を積極的に活用し、議論を深めるべきだ。

(読売新聞2024年6月22日号より)



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