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英国政権交代:労働党の圧勝は国民の希望と困難を反映

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英国民は、EU離脱や新型コロナウイルスのパンデミックによる悪影響に苦しみ、保守党政権の継続を拒否し、変化を選んだと言えるだろう。

英国下院選挙で最大野党の労働党が圧勝し、1選挙区1議席の650議席中400議席以上を獲得した。これにより14年ぶりの政権交代が実現し、党首のキール・スターマー氏が新首相に就任した。

一方、元首相のリシ・スナック氏が率いる保守党は多くの議席を失い、議会解散前の議席数の半分以下しか獲得できなかった。これは歴史的な敗北だ。

英国は保守党政権の主導による国民投票でEUを離脱したが、この選択をめぐって社会の分断と混乱が深まり、多くの英国民は期待していた離脱の成果を実感できずにいる。その失望感が選挙結果に反映されているのかもしれない。

保守党は、EUを離脱すれば英国は財政と政策の自由度が増すと主張していた。しかし、経済減速とインフレは止まらず、英国自身の移民規制は実際には深刻な労働力不足を招いている。

近年の首相のずさんな統治が国民の保守党離れを加速させたことは否定できない。ボリス・ジョンソン前首相はパンデミックの最中に首相官邸でパーティーを開いたことで批判された。エリザベス・トラス前首相は突然の大規模減税発表で市場の信頼を失い、辞任に追い込まれた。

労働党は2019年の前回総選挙で大敗し、スターマー氏が党首に就任した。スターマー氏は水道国有化など前党首の急進左派的な公約を撤回し、より中道的な政策を追求する考えを示している。

より現実的なアプローチへの転換は幅広い有権者に受け入れられたかもしれないが、今後は保守党時代の負の遺産を払拭し、成果を上げるという困難な課題に取り組まなければならない。

労働党が外交・安全保障分野で保守党の政策を継承する方針を示したことは評価に値する。

新政権はロシアの侵略に苦しむウクライナを支援し、対ロシア制裁を継続する。また、EUとの関係改善も進める。新政権下の英国が、欧州主要国として国際社会の安定化に向けて引き続きリーダーシップを発揮することが期待される。

英国は近年、インド太平洋地域への関与を強めている。中国の積極的な海洋進出を念頭に、パートナーとして日本を重視している。日本と英国はイタリアとともに次世代戦闘機の共同開発を進めている。

日本と英国は民主主義や法の支配といった普遍的価値を共有しており、日本が英国の新政権と幅広い分野で協力を進めていくことは、両国のみならず世界全体の利益となる。

(読売新聞2024年7月6日号より)



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