ホーム Fuji 自衛隊創設70年 役割拡大/空自、宇宙に任務拡大 中国・ロシアが衛星に狙いを定める中、民間と連携

自衛隊創設70年 役割拡大/空自、宇宙に任務拡大 中国・ロシアが衛星に狙いを定める中、民間と連携

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読売新聞
航空自衛隊が今年度から運用を開始する宇宙状況監視(SSA)レーダーが6月21日、山口県山陽小野田市で撮影された。

1954年7月1日に自衛隊が発足して以来70年、ソ連の崩壊や中国の台頭など、日本の安全保障環境は大きく変化した。自衛隊の役割の拡大について論じる連載第3回。

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山口県の国道沿いに、巨大な白い球体の群れが周囲の森を見渡している。

地球を周回する人工衛星の監視などに使われる航空自衛隊の宇宙状況監視(SSA)レーダー施設。山陽小野田市にあり、今年度中に運用が開始される予定だ。



このレーダー施設は、地球から約3万6000キロ上空の静止軌道上の衛星や、衛星に衝突する可能性のある宇宙ゴミを追跡する。また、他国の衛星を攻撃するために設計された「キラー衛星」にも目を光らせる。

米国の早期警戒衛星は、地球上の熱源を監視するために高感度センサーを使用している。ミサイル発射による放射を検知すると、直ちに米国と日本に警告が送られ、イージス艦やその他の防衛システムが迎撃に備えられる。

衛星は通信中継や画像撮影による偵察、全地球測位システム(GPS)など多岐にわたる機能を担っている。ロボットアームや電波妨害などを使ったキラー衛星が日本や米国の衛星を攻撃すれば、自衛隊の活動に重大な支障をきたし、国民生活にも影響を及ぼしかねない。

空自は2020年に約20人で構成される初の宇宙部隊「宇宙作戦隊」を新設。2年後には宇宙作戦群に昇格し、今年度中に320人規模に拡大する予定だ。

政府は2026年度に宇宙からの監視を担う宇宙状況監視(SDA)衛星を打ち上げる計画で、航空自衛隊は2027年度までに「航空宇宙」自衛隊に改称される。

衛星攻撃のテスト

航空自衛隊の宇宙任務の拡大は、中国などの国が他国の宇宙システムへの干渉能力を強化していることに起因している。

中国はキラー衛星の開発を進めており、衛星同士をより接近させる実験を繰り返している。

2019年末、中国の実験衛星SJ-17号は静止軌道上の中国のテレビ放送衛星に接近することに成功した。同衛星はその前年と翌年に他の衛星に対しても同様の接近を繰り返し、時には1キロ以内に接近した。

「中国、ロシア両国の衛星が日本の衛星に接近している」と日本政府高官は述べた。両国はミサイルで衛星を破壊する実験も行っている。

2022年に改訂された国家安全保障戦略では、日本は敵国の指揮統制・通信システムを混乱させる能力の開発を目指すとされている。政府は紛争時に外国の軍事衛星を妨害できる衛星の開発を検討する。

技術の二重利用

空自の宇宙連携推進室は東京・虎ノ門の高層ビル15階にある。私服姿の職員2、3人が常駐し、企業関係者などと意見交換している。

同室は民間技術を防衛に活用することを目指して昨年10月に設立され、設立後6カ月で120以上の企業や団体と取引があった。

企業からは、弾道ミサイルの探知に役立つ大気圏再突入物体探知システムや、通信の安全性を高める量子暗号通信技術など幅広い提案があり、空自は自衛隊の施設を使った実証実験のアイデアで対抗している。

空自の担当者は「優れた技術やアイデアを持つ企業は数え切れないほどある。ここでの議論は、将来の戦略構想作りにも役立つだろう」と話す。

技術を民生用と防衛用で分けるのは難しくなっている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は2019年、小惑星リュウグウの地下からサンプルを採取することに成功した。金属弾で表面を突き破る技術は、爆発成形弾(EFP)と呼ばれる軍事技術と共通点があった。

自衛隊による宇宙利用や、技術の民生・防衛両面への活用は、かつては政治的に議論を呼ぶ可能性もあった。航空自衛隊の70年の歴史は、安全保障環境の緊張の高まりとそれに伴う国民の意識の変化を反映している。

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