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自動車認証における不正行為:なぜ法令が度々無視されるのか?

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自動車の認証試験をめぐる不正は、業界最大手のトヨタ自動車をはじめ、国内大手メーカーに広がっている。原因を徹底的に調査し、不正行為を根絶し、業界への信頼を早急に回復する必要がある。

国土交通省は、自動車やバイクの量産に必要な「型式認証」をめぐり、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の自動車メーカー5社が安全・環境性能に関する不正行為を行っていたことを確認したと発表した。

不正行為は計38車種に及ぶ。トヨタの「カローラフィールダー」など現在生産中の6車種は出荷停止命令が出されている。

トヨタグループのダイハツ工業と豊田自動織機で昨年、認証試験の不正が発覚。国交省は自動車関連企業85社に対し、過去10年間に不正がなかったか調査し、結果を報告するよう求めた。

大手メーカーにまで不正が波及したことの影響は大きい。自動車は関連企業を含めて550万人の雇用を支えている。高品質で世界各国の顧客を獲得してきた日本車の信頼性を著しく損なうものだ。

同省は4日、道路運送車両法に基づきトヨタ本社に立ち入り調査を実施した。今後は他の4社にも立ち入り調査を行う方針。再発防止に向け、徹底した実態解明に努めてほしい。

型式認証とは、自動車を市場に出す前に国が安全性能などの基準を満たしているかを審査する制度。一度認証を受ければ、自動車メーカーは一台ずつ国の検査を受ける必要がなくなる。

しかし、メーカーが適切なテストを行うことが前提であり、不正なテストが行​​われれば制度の根幹が揺らぐことになる。

メーカー側は不正を認めながら安全性に問題はないと言い切れるのか。なぜ認証試験の基準が守られていないのか。政府や業界は原因を解明しなければならない。

三菱自動車工業の認証試験不正が発覚して8年が経ち、不正は後を絶たない。不正の形態も多様化している。

不正行為では、エンジン出力データの改ざんが目立ったが、トヨタは規制基準の1・1トンの台車を衝突させる安全試験で、実際はもっと重い1・8トンの台車を使用していた。トヨタによると、認証試験のデータとしては開発段階のデータが使われていたという。

メーカー側は基準より厳しい検査だったとしているが、新車開発競争が激化し、法規制で定められた手続きを省略した可能性もあるという。

自動車業界は電気自動車へのシフトなど大きな変革期を迎えている。開発が複雑化し、認証試験制度も時代に合わないとの指摘もある。国際競争力を低下させないよう制度を見直すのも課題だ。

(読売新聞2024年6月5日号より)



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