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自動車業界:請負業者への責任転嫁をやめろ

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自動車業界では、量産化に必要な型式認証の不正申請問題以外にも多くの問題を抱えている。

高価格化に伴うコスト削減の影響を受けるのは中小企業だけという業界の根深い問題の本質を変えなければならない。

公正取引委員会は7日、日産自動車が部品の受注後に下請け業者に支払う価格を値下げしたとして、下請法に違反したとして同社を勧告した。勧告では、再発防止などを求めている。

訓告後も不正取引が続いていたとの報道があったため、日産は先月末、独自調査の結果を発表した。同社は法令違反はなかったとしているが、内田誠社長は記者会見で「取引先から不満の声が高まっているのは事実だ」と述べた。

日産は、取引先への対応を徹底するため、社長直轄の組織を設置するとした。

日本の自動車産業で中小企業の不満が強い背景には、構造的な問題がある。競争力を誇る大手企業が、下請け企業に長期的な取引を保証する代わりにコスト削減を求め、共に成長してきたからだ。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行以降、エネルギー価格の高騰などによりインフレが進み、中小企業は大手顧客企業との取引においてコスト上昇分を価格に転嫁することに苦慮している。

公正取引委員会は21年にマツダを違法と認定。22年にはトヨタ系大手部品メーカーのデンソー、今年はダイハツ工業などを取引先との取引に問題がある企業として公表した。

自動車産業は基幹産業であり、関連事業を合わせると約550万人の雇用を生み出している。協力会社との取引改善に率先して取り組むべきだ。

業界団体の日本自動車工業会は6月末までに検査結果を提出し、下請法違反の有無を報告する予定だ。徹底した問題点の洗い出しが必要だ。

一連のトラブルを受け、同協会は適正な取引を確保するため自主行動計画を改定。自動車メーカーは、サプライヤーに対し、エネルギーや原材料費の上昇分を適正な水準で顧客への価格転嫁を認める方針だという。

日本経済はデフレ脱却へ向けて転換期にある。トヨタの24年3月期の利益は5兆円に迫り、ホンダも1兆円を超えた。大手各社は適正なコスト転嫁を容認し、中小企業の賃上げ余力を高めることが重要だ。

下請けへの責任転嫁の問題は自動車業界に限ったことではない。例えば物流業界は特に転嫁が難しいとされる。政府や公正取引委員会は業界への監視を強化すべきだ。

(読売新聞2024年6月9日号より)



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