ホーム Fuji 経済財政政策の基本方針を決定:日本の底力発揮に向けたビジョンを提示

経済財政政策の基本方針を決定:日本の底力発揮に向けたビジョンを提示

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日本経済の国際的存在感の低下に対する危機感が足りない。政府は成長加速に向けた中長期的な展望を再考すべきだ。

政府は「骨太の方針」とも呼ばれる経済財政運営と改革の基本方針を閣議決定した。国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する目標を掲げ、年次方針で基礎的財政収支に関する目標を定めるのは3年ぶりとなる。

この政策では、日本がデフレから完全に脱却し、成長型経済を実現するまたとないチャンスにあるとの見方が示された。

今年の春闘では、33年ぶりの平均賃上げが実現した。日本企業は長年、コスト削減に努めてきたが、魅力ある製品やサービスを提供し、成長経済へと移行する段階にある。

そのためには、賃上げが可能な環境を整えることが重要です。中小企業は、大企業との取引において、コスト上昇分を販売価格に転嫁できず、賃上げ余力が乏しいのが現状です。

政府は下請法改正も視野に、コスト上昇分を価格に転嫁する対策を推進する考えを強調しており、具体化に向けた取り組みを加速することが期待される。

日本経済の衰退は深刻だ。ドル建て名目国内総生産は2023年にドイツに次いで4位に落ち込む。2025年にはインドにも追い抜かれ、さらに5位に沈むとの予測もある。

日本は成長を促進する潜在力を活用するため、中長期的な経済ビジョンを構築する必要がある。

今年の骨太方針で、人口減少が本格化すると予想される2030年代以降の経済見通しが示されたことは、そのための一歩となり得る。

政策では、経済、財政、社会保障の持続可能性を確保するため、実質GDP成長率が安定的に1%を超えることが必要だと指摘。政府は、これにより名目GDPが現在の約600兆円から2040年頃に約1000兆円に増加すると試算している。

政府は、この目標達成のために、脱炭素化や経済のデジタル化の推進、外資の拡大、高齢者や女性の労働力参加などの施策を挙げている。これらの施策自体に異論はないが、各省庁の既存施策を寄せ集めた、万人受けする大雑把な政策という印象は否めない。

日本経済の潜在力を引き出すことが重要だ。企業が500兆円を超える内部留保を国内投資に回すよう、具体的な方策が求められる。企業と大学の連携強化策も打ち出され、技術革新につながることが期待される。

骨太の政策については、各省庁が予算獲得に有利になるとして、小さな施策でも具体化しようとする姿勢が固定化している。策定プロセスの見直しも含め、文字通り「骨太」なビジョンを打ち出す時期が来ている。

(読売新聞2024年6月23日号より)



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