2024年7月29日 17時39分(日本時間)
核保有国の中国とロシアに加え、北朝鮮も核攻撃能力を持つとみられ、核兵器を含む米国の軍事力で日本を守る拡大抑止の必要性が現実のものとなった。
日米両政府は、不測の事態に備えて具体的な手順を策定する必要がある。
日本と米国の外務・防衛大臣は東京で拡大抑止に関する初の会合を開き、同盟の抑止体制を強化することで合意した。
両国は2010年以降、拡大抑止に関する実務協議を定期的に開催し、日米安全保障条約に基づき米国が通常戦力と核戦力で日本に対する防衛義務を履行することを繰り返し確認してきた。
両国は、日本周辺の安全保障環境が著しく悪化していることから、抑止力を強化することを閣僚レベルで確認した。
中国は500発以上の運用可能な核弾頭を保有しているとみられる。北朝鮮は昨年、憲法に核戦力の強化を明記した。ウクライナへの侵略を続けるロシアは戦術核兵器の使用をちらつかせている。
日米両国が緊密に協議し、現実の脅威を踏まえた実効性の高い協力体制を構築することが急務だ。両国は同盟の強い絆を内外に示し、抑止力を高めていくべきだ。
そうなれば、米軍が日本周辺で核兵器を使用した場合、核兵器を保有せず、製造せず、持ち込みも許さないという日本の非核三原則の整合性が問われることになる。特に、核兵器の持ち込みを許さないことに関しては、核兵器を搭載した原子力潜水艦の日本への寄港をめぐって問題が生じる可能性がある。
民主党政権時代の2010年、当時の岡田克也外相は、緊急事態における核兵器搭載艦の寄港について問われ、「その時の政権が命運をかけて判断する」と答えた。これは現在も政権の立場である。
日本は核兵器を持っていないからといって、核兵器を使われないわけではない。政府は危機への対応を積極的に検討すべきだ。
有事の際に米国が本当に日本を守るために核兵器を使用するかどうかについても議論がある。
日本が安保条約に基づき米軍基地を提供してきたことで、米国がインド太平洋地域で影響力を行使していることは事実だ。拡大抑止の信頼性を高めるためにも、日本は引き続き米軍を支援していく必要がある。
4大臣は安全保障政策全般に関する協議で、弾道ミサイルを迎撃する地対空ミサイルの国内生産体制を強化し、米国に輸出することでも合意した。ウクライナへの軍事支援で弾薬などが不足する米国を支援するのが狙いだ。
こうした取り組みは同盟の深化にもつながるだろう。
(読売新聞2024年7月29日号より)