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米国の対中関税:貿易摩擦の高まりが懸念材料

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米中貿易摩擦が激化すれば、世界経済へのダメージは甚大となる。 両国が互いに過剰な措置を自制し、対話による解決を模索することが期待される。

米政府は中国に対する懲罰的関税を強化し、中国製電気自動車への関税率を現在の25%から4倍の100%に引き上げる計画を発表した。

旧世代半導体チップは関税率が25%から50%に引き上げられる。鉄鋼とアルミニウムは約3倍の25%となる。報復関税の対象は7分野、180億ドル(約2兆8000億円)相当とされる。

懲罰的関税は、貿易相手国の不公正な貿易慣行を是正する目的で関税を一方的に引き上げることができると規定した米国通商法第301条に基づいて実施される。

米政府は、中国が低価格の輸出品を世界市場に氾濫させ、他国を犠牲にして自国の成長を押し上げているために、懲罰的関税が引き上げられたと説明している。

ジョー・バイデン米大統領は、11月に予定されている米大統領選挙を前に、選挙結果を左右する可能性のある労働者の票を獲得すべく、ドナルド・トランプ前大統領と保護主義的な主張で競い合っている。

制裁関税の主な目的は、バイデン氏の選挙戦略の一環として、中国からの安価な製品の流入を防ぎ、国内産業と雇用を守る姿勢を示すことだろう。

しかし、貿易摩擦は世界貿易機関の紛争解決手続きに従って対処されるべきであり、米国政府の一方的な保護主義的措置は紛争を激化させる恐れが大きい。貿易の収縮につながり、世界経済を悪化させる恐れがある。

ジャネット・イエレン米財務長官は先月、中国の李強首相と会談し、対話の継続を確認した。 粘り強く議論を続け、事態の過熱を防ぐために全力を尽くすことが重要だ。

一方、中国の過剰生産を問題視する見方は米国だけでなく欧州でも広がっている。

中国政府は電気自動車産業などの育成に巨額の補助金を活用しており、国内需要をはるかに超えて生産された製品が海外に溢れている。 このことは今週開催される先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議でも主要議題となる見通しだ。

中国の過剰生産は根が深く、再発している。 鉄鋼の過剰生産は2010年代に世界的な問題となった。

中国は投資と輸出偏重の政策を転換し、消費と内需主導のバランスの取れた経済成長に転換する必要がある。 これは西側諸国との貿易摩擦の抑制にも役立つ可能性が高い。

米国と中国という二大大国が、世界経済の健全な発展に重い責任を負っていることを自覚することが望まれる。

(読売新聞2024年5月23日号より)



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