ホーム Fuji 病院は移植に関して「苦渋の決断」を迫られる。調査ではICUとスタッフの不足が主な問題として挙げられる

病院は移植に関して「苦渋の決断」を迫られる。調査ではICUとスタッフの不足が主な問題として挙げられる

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Yomiuri Shimbun file photo
東京都文京区にある東京大学病院

日本の三大病院を対象にした最近の調査で、脳死ドナーからの臓器移植が最終的に行われなかった具体的な理由が明らかになった。国内では脳死ドナーがまだ不足しており、今後予想される臓器提供の増加を考えると、移植システムがパンクしないようにするための取り組みを加速させる必要がある。

ゴールデンウィーク後半の5月4日、東京大学医学部附属病院で脳死患者からの心臓と肝臓の移植手術が行われた。同病院は肺移植の依頼も受けたが、1日2件までという院内規定を理由に断った。

移植は緊急手術で時間もかかるため、病院では多くのスタッフが手術にあたる。手術室を確保するため、予定していた手術を延期することもある。同病院によると、他の医療とのバランスを保つため、移植手術の件数を制限せざるを得ないという。

東京大学医学部附属病院では今年に入ってから、脳死患者からの心臓、肺、肝臓の移植手術を33件実施している。これは全国の臓器移植手術の4分の1にあたる。

移植を拒否することもあることについて、同病院外科センター長の深津和彦氏は「移植を待つ患者を救いたいのはもちろんだが、苦渋の決断をしなくてはならないケースもある」と真剣な表情で語った。

米国、韓国より低い

日本移植学会(JST)が東京大学病院、京都大学病院、東北大学病院を対象に実施した調査によると、3施設は2023年に計62件の臓器移植を断った。

理由を尋ねたところ(複数回答可)、最も多く挙げられた原因は「集中治療室の空きがない」だった。この理由で20件の移植手術が拒否された。

臓器移植後、患者はICUで人工呼吸器の管理や、提供された臓器の拒絶反応を防ぐための薬剤投与などの治療を受けます。ICUは、外傷、脳卒中、がん、その他の病状の手術を受けた他の患者にも使用されます。

経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2023年の日本の人口10万人あたりの集中治療室のベッド数は14.4床となり、米国の21.2床、韓国の17.1床、OECD加盟国平均の16.9床よりも低い。

日本集中治療医学会理事長の黒田康弘氏は「大学病院のICUはほぼ満床で、十分なICUスタッフの確保が難しい。さらに財政状況もあって、万が一に備えてICUのベッドを空けておく余裕はない」と話す。

米国で15年以上肺移植手術に携わってきたテンプル大学の重村範久教授は「米国では集中治療室のベッドが満杯でも、症状が軽い患者を他のベッドに移して臓器移植を行う病院が多い」と話す。

「米国とは異なり、日本では臓器移植を優先する文化やシステムが十分に確立されていません。このため、多くの日本の病院が臓器移植を断念することになるかもしれません。」

JSTの調査では、移植手術を担当する移植医、麻酔科医、看護師などのスタッフの不足も、臓器移植を断るよくある理由として挙げられた。

奈良県立医科大学の今村智明教授(医療政策)は「政府は大学病院が臓器移植を断らざるを得なかった理由や、ICUの不足などを精査する必要がある。移植手術が集中している病院がベッド数や人員を増やせるよう、財政支援の議論だけでもすべきだ」と指摘する。

働き方改革

移植手術に携わる医師は長時間労働を強いられる。医師の残業時間を制限するなど4月に施行された働き方改革により、医師不足で移植手術の拒否が増えるのではないかとの懸念も広がっている。

移植医は手術を行うだけでなく、脳死ドナーとともにドナー施設を訪問し、ドナーから臓器を回収し、自分の施設に輸送します。

こうした医師の負担を軽減するため、JSTは2017年に医療機関間の相互支援システムを導入した。臓器提供施設や近隣の医療機関の移植医が、移植施設の医師に代わってドナーから臓器を回収する。日本臓器移植ネットワークも2019年に臓器輸送を民間企業に委託する取り組みを始めた。

原則として、臓器移植の待機患者は順番が来たら事前に登録した施設で手術を受けることになる。

「国内の臓器提供数は増加傾向にある。医療機関が移植手術を拒否しても、他で手術を受けられる体制が必要だ」と愛知県の藤田保健衛生大学病院の臓器移植科教授、剣持隆氏は言う。



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