京都 –
関西の研究チームは、歯の成長を助ける薬の開発に来月から臨床試験を開始する予定だ。
北野病院や京都大学医学部附属病院などの研究者らは、生まれつき歯が少ない先天性無歯症の患者の治療を目的とした歯生え医学の臨床試験を行う。
安全性を確かめるため、まずは奥歯を失った成人男性に治験薬を投与し、その後先天性無歯症の子どもにも投与する。研究チームは2030年ごろの実用化を目指す。
先天性無歯症は100人に1人、遺伝性で歯が6本以上欠損している人は1000人に1人いるとされる。根本的な治療法はなく、子どもは成長するにつれ入れ歯を作り直さなければならない。
研究グループは、歯の成長を抑制するタンパク質「USAG-1」を発見し、その働きを阻害する薬を開発した。先天性無歯症のマウスやイヌにこの薬を投与すると、歯が生えることを確認した。
臨床試験は来年8月まで行われる。第1段階では、京都大学医学部附属病院で30歳から64歳までの健康な男性30人に静脈注射で薬を投与し、治療の安全性と適正投与量を調べる。第2段階では、歯が4本以上欠損している2歳から7歳の患者を対象とする。
この治療法は将来、虫歯などの問題で永久に歯を失った人々にも適用される可能性がある。
大阪市の北野病院歯科口腔外科部長の高橋克さんは「歯がないことで生活に困難を抱える人たちの期待に応えたい」と話す。