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欧州議会選挙:右派の台頭を招いたものは何なのか?

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欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会選挙では、自国第一主義を掲げる極右勢力が躍進。EUの移民政策や環境規制の修正を求める圧力が強まるのは必至だ。

選挙では中道派の欧州人民党を含むEU支持派の主要3団体が720議席中400議席を獲得し、過半数を維持した。

一方、右派勢力は議席の20%以上を獲得し、過去最高の議席数となった。5年前の前回選挙で躍進した環境保護政党は、議席を大幅に減らした。

右派勢力は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰や移民・難民の流入などの問題に対してEUが十分な対策を講じていないと批判しており、こうした主張が有権者に受け入れられたことは間違いない。

脱炭素化などの進歩的な環境規制に対しても、政策がイデオロギー主導であり、国民の経済的負担増加への配慮が欠けているとして、強い反対があった。

EUは選挙結果に示された民意の背景を分析し、問題解決につながる確固たる政策を策定すべきだ。

懸念されるのは、EU離脱や外国人排斥を訴える右派ポピュリスト勢力が、EU統合を推進してきたフランスやドイツで大きく躍進していることだ。

フランスでは、右派の国民連合党がエマニュエル・マクロン大統領率いる与党連合の2倍以上の議席を獲得した。大敗を受けてマクロン大統領は下院を解散した。これは選挙結果が政権に及ぼす影響の大きさを示している。

ドイツでは、右派政党「ドイツのための選択肢」が、オーラフ・ショルツ首相の政権を支える与党3党のいずれよりも多くの議席を獲得した。

右派勢力が台頭した国では、政治指導者やエリート官僚がEUとの協調を優先する政策を打ち出し、国民生活に過度の負担をかける結果になっていることへの不満がくすぶっていたのかもしれない。

「アメリカ第一主義」を掲げたドナルド・トランプ前大統領への支持が広がった米国でも同様の傾向が見られると言える。

欧州は人権、多様性の尊重、民主主義を基本理念としてきたが、欧州が内向きになり、国際秩序に悪影響を及ぼすことが懸念される。

今後、右派勢力が対ロシア制裁の見直しやウクライナ支援を求める可能性も否定できない。

選挙前には、ロシアが欧州議会議員に資金を提供していたとの疑惑が浮上した。対ロシア政策をめぐってEU加盟国の結束が崩れ、ロシアが有利になるような事態は避けなければならない。

日本は価値観を共有するパートナーとしてEUとの連携を重視してきた。EUが政策を着実に進めていくよう支援していくことが期待される。

(読売新聞2024年6月12日号より)



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