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株主総会:経営陣人事が今や深刻な対立の源に

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株主の企業経営への発言力が高まってきており、株主総会での対話を深め、中長期的な企業成長につなげていくことが期待されます。

上場企業の株主総会がピークを迎えた。最も忙しい27日は3月決算企業の約3割にあたる約670社が総会を開いた。株主提案を受けた企業は過去最多の91社で、個別提案の件数も約340件に上った。

衣料品ブランド「ニューヨーカー」を展開するダイドーは、2024年3月期まで11期連続で営業赤字を計上しており、国内投資ファンドが経営陣の刷新を求めていた。株主総会では、ファンドが提案した取締役候補者6人のうち3人が選任された。

中堅証券の東洋証券は、長引く経営不振を受け、社長の再任が否決される可能性が高まったため、株主総会直前に社長の取締役への再任議案を撤回し、社長が退任した。

株主の企業業績や株価に対する目は厳しくなっていると言え、経営陣の再任が容易にできる時代ではないようだ。企業は株主の声に真摯に耳を傾け、スピード感を持って改革に取り組む必要がある。

企業統治の説明責任も重要になっている。型式認証試験の不正が発覚したトヨタ自動車では、豊田章男会長の再任案に対する賛成率は前年より約13ポイント低下し、7割強となった。

株主の声が強まる背景には、東京証券取引所が2023年春に上場企業に求めた経営改善策がある。株価が割安か割高かを示す株価純資産倍率に着目し、株価向上に資する戦略の策定を求めた。

取引先との関係維持などのために保有してきた株式を売却する動きが加速し、会社の提案に原則賛成する「忠実な株主」が減っていることも、株主の影響力を高める要因となっている。

こうした中、改革を強く求める「物言う株主」の声は高まっているようだが、自社株買いや増配など株主への利益還元策の提案が多かったのは気がかりだ。

これらの施策は、当面は株価上昇に効果があっても、中長期的な成長資金が乏しくなると企業経営に悪影響を及ぼす恐れがある。短期的な利益偏重の要求に振り回され続ければ、持続的な成長は望めない。

日経平均株価は40,000円近くと史上最高値となっている。円安で日本株が割安になっていることもあり、外国人投資家は日本株に高い関心を示している。

小口投資の利益が非課税となる「日本少額投資信託」の拡充で、個人投資家の裾野が広がる可能性もある。企業は成長戦略に磨きをかけることでしか、多くの株主の賛同を得られないことを肝に銘じるべきだろう。

(読売新聞2024年7月2日号より)



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