2024年6月14日 18:01 日本時間
林芳正氏が岸田文雄首相の下で官房長官に就任して半年が経った。政権支持率が低迷する中、林氏は政権の安定の柱となってきた。
自民党内の派閥をめぐる一連の政治資金スキャンダル発覚を受け、昨年12月の人事異動で同氏に就任した。
しかし、党内には、連立相手との仲介役を務めるなど政権の要としての役割を担う同氏のパフォーマンスに不満を表明する者もいる。
「政治を信用しない人々の声に真摯に耳を傾けてきたし、職務を軽く考えているわけではない。今後も政権の仕事をしっかりと支えていきたい」と林氏(63歳)は木曜日、記者団に語った。
閣僚としての就任は今回で7回目。過去には農林水産大臣、文部科学大臣、外務大臣などを歴任した。
政策の専門家として知られる林氏は、めったに失言をしない。日々の記者会見を難なくこなし、1月に能登半島を襲った大地震のような危機管理でも決して冷静さを失うことはない。
各省庁から意見を求められた場合、岸田氏は「官房長官がOKと言ったらOK」と答えることが多いと側近らは話す。首相が林氏の政治手腕に信頼を寄せている証拠だ。
一方、林氏は最近の一連の自民党派閥の政治資金スキャンダルとは距離を置いており、「政権の人間が党のことに口出しすべきではない」と周囲に語っているとされる。
その結果、岸田氏は党幹部との調整や交渉を一人で行うことが多い。「林氏には政治的勇気が足りない」と、安倍晋三前首相政権で官房長官を務めていた菅義偉氏が、自民党の連立与党である公明党との政策調整に全力を尽くしていたことを覚えている自民党の中堅議員は言う。
林氏のこうした姿勢は、首相との微妙な距離感から来ているとの見方もある。2人は長年、自民党宏池会(岸田派)が期待を寄せるライバル関係にある。
岸田氏は林氏に現職を正式に打診する前に、同党の木原誠二幹事長代行を通じて意向を打診した。同派閥に詳しい関係者は、岸田氏と林氏は「信頼と緊張が共存する関係」と話す。
しかし、岸田氏の後継を志す林氏にとって、宏池会派政権を支えることは不可欠だ。政権に逆風が吹く中で、内閣の求心力を強化できるかどうかが、その政治手腕の試金石となる。