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日系ブラジル人:苦難と努力の歴史が報われた

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移住先のブラジルで不当な扱いを受けた日本人の名誉が回復された歴史的な判決。日本とブラジルの関係がさらに深まるきっかけとなることを期待します。

ブラジル政府の諮問機関である恩赦委員会は、第二次世界大戦中および戦後にブラジルで日本人移民などに対して行われた迫害について初めて公式に謝罪した。

戦争中、ブラジルは連合国側に付き、日本は敵となった。

サンパウロ州サントス市では、約6500人の日本人移民がスパイ容疑で国外退去を命じられ、終戦後も日本の敗戦を信じなかった日系ブラジル人172人が狂信的なテロリストとして投獄されるなど、人権侵害に当たる事件が相次いでいる。

同委員会のエネア・アルメイダ委員長は「皆さんの先祖が受けた迫害と人種差別についてお詫びします」と述べた。

戦争終結から80年近くが経過し、迫害を直接経験した生存者は少なくなっているが、ブラジル政府が自らの過ちを認め、名誉回復に努めてきたことは注目に値する。

これは、昨年1月に元軍人で右派の前大統領ジャイル・ボルソナーロ氏から、過去の人権侵害を積極的に検証し始めた左派の現大統領ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ氏に政権が交代したことが大きな要因だ。

1908年に日本からブラジルへの移民が始まり、現在では日系ブラジル人の数は約270万人に達し、世界最大の日系コミュニティを形成している。しかし、戦中戦後のブラジルでの苦難の歴史はあまり知られていなかった。

迫害を受けた移民の多くが、再び迫害されることを恐れて沈黙を守ったためだ。今回、日系三世の男性らは、賠償を求めるのではなく、迫害を認めて謝罪するようブラジル政府に求める運動に注力した。

日系ブラジル人は差別を乗り越え、政治、経済、芸術、農業など幅広い分野で戦後ブラジル社会に貢献してきた。こうした地道な努力は、ブラジル政府に「負の遺産」の解消を促した面もある。

ルラ政権は日本との関係強化に意欲を示しているが、経済面では中国との関係も重視している。中国はブラジル最大の貿易相手国であり、両国は新興経済国グループBRICSの一員でもある。

ブラジルと日本の貿易総額は近年縮小傾向にあるが、アマゾンの森林保護など環境分野での日本の技術や資金に対する期待は依然として大きい。

日本とブラジルは、国連安全保障理事会の改革を目指すG4の一員でもある。新興国・途上国、いわゆる「グローバル・サウス」の主要国であるブラジルとのつながりを生かし、国際社会の安定に貢献していくことが期待される。

(読売新聞2024年7月30日号より)



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