ホーム Fuji 日本のオリンピックは地方自治体に負担をかける。根本的な改革は可能か?

日本のオリンピックは地方自治体に負担をかける。根本的な改革は可能か?

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読売新聞ファイル写真
2023年国民体育大会の開会式で2人の選手が選手宣誓を行った。

各都道府県が持ち回りで開催する総合競技大会「ジャパンゲームス」が大きな岐路に立たされている。主催者の日本スポーツ協会は5日、抜本的な改革を議論する有識者会議の設置を決めた。議論では、長年課題とされてきた開催自治体の負担軽減をどう図るかが焦点となる。

日本大会の前身である国民体育大会は1946年に始まり、それ以来ほぼ毎年開催され、秋の本大会と冬の大会では40競技に計2万7千人が参加している。秋の大会は47都道府県で持ち回りで開催され、2034年の沖縄大会で2回目の開催となる。

国民体育大会は、日本語では国民体育大会と呼ばれ、一般には国体と略されていました。しかし、日本語の名称には「スポーツ」という言葉は含まれていませんでした。体育は体育を意味し、精神、技術、身体能力の適切な組み合わせを備えた個人を育成するという点で、このイベントには教育的な側面がまだ残っていました。

しかし、時代が変わり人々の価値観も変化する中で、スポーツの純粋な価値を世界中の人々と共有するために、「体育」という言葉は世界共通語である「スポーツ」に置き換えられ、今年から日本語名称が「国民スポーツ大会」、略称が「コクスポ」に変更され、英語名称も「Japan Games」に変更されました。

日本競技大会は、戦後の復興期に始まり、47都道府県で持ち回りで開催され、全国各地のスポーツ施設の整備を促進し、我が国のスポーツの普及・振興、競技力の向上に大きく貢献してきました。

日本大会は、大会開催に合わせて「国体道路」が建設されるなど、地域の生活や産業に関わるインフラの整備にも役割を果たしてきました。

しかし、2回目の開催を迎えると、施設の老朽化による改修や新設が相次ぎ、開催自治体からは財政面や運営面での負担増を訴える声が上がった。

1990年代に問題が表面化し、日本オリンピック委員会は2003年に運営の簡素化を柱とする「大会改革プラン」を策定。これに基づき、2006年に夏季と秋季の大会を一本化し、2008年には参加者数を15%削減することを決定した。

しかし、こうした変更を行っても、地方自治体が集会の開催を負担と感じているという事実は変わらなかった。

全国知事会会長の村井嘉浩宮城県知事は、この状況に不満を抱いたようで、大会を批判した。今年4月の定例記者会見で、村井知事は、日本大会は都道府県に多大な財政負担を強いていると述べた。

村井氏は「五輪の廃止も一つの選択肢だ。今のままのやり方でいいのか、立ち止まって考える必要がある」と語った。

彼の厳しい発言は全国から支持を集めた。

大阪府の吉村洋文知事は「地方の協力も得て、数年に一度の開催でいいのではないか」と語り、福岡県の服部誠太郎知事は「健康増進やインフラ整備に大きな役割を果たしてきたが、開会式の規模縮小や競技数の縮小も検討すべきだ」と述べた。

自治体の不満もあるが、開催が地域に利益をもたらすのも事実だ。冬季大会と22年秋季本大会を開催した茨城県は全国障害者スポーツ大会など総額828億円の経費を投じたが、経済波及効果は1183億円に上った。そのため、全ての知事が大会廃止に賛成しているわけではない。

秋田県の佐竹敬久知事は「負担は大きいが、選手のモチベーションアップにつながる。慎重に議論すべきだ」と述べた。一方、山形県の吉村美栄子知事は「日本大会は持続可能な大会として開催すべきだ。国や日本協会など誰が負担すべきか検討する必要がある」と語った。

有識者会議は知事らの懸念の深刻さを受けて設置された。35年以降の3回目の開催に向け、抜本的な改革を議論する。地方自治体や競技団体、元選手ら20~30人で構成される。

協議には、日本大会の見直しを求めている日本体育協会にも参加を要請する。委員長には経済波及効果や地方創生に詳しい企業幹部らが候補に挙がっている。

「日本オリンピックを廃止すべきだと考える人がいるのは当然だ」と、元五輪大臣で日本スポーツ協会会長の遠藤利明氏は6月5日の記者会見で述べた。「個人的には、非常に良い影響があったと思う」と付け加え、将来的にもオリンピックを継続したいとの希望を表明した。

日本スポーツ協会のこの動きに対し、村井会長は「日本大会が持続可能なものになるよう、日本大会も検討する。日本大会の廃止は考えていない」と述べた。

同志社大学の横山勝彦教授(スポーツ政策)は「協会は歴史的背景や自治体の財政状況を踏まえて日本大会を見直し、新たな日本大会の価値を示さなければ理解は得られない」と指摘する。

第2回大会終了まで残り10年となった今が、協会としては最後の改革のチャンスとみている。自治体の財政負担を軽減し、持続可能な開催方法をどう考えていくのか。何事にも妥協しない議論で国民全体が納得できる結論を出さなければならない。

Political Pulse は毎週土曜日に掲載されます。




Yuji Kondo

近藤雄司氏は読売新聞のスポーツ部編集委員です。




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