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政治資金規正法改正:カネに頼らない政治の転換期に

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現状の政治資金制度改革はまだまだ不十分だが、一度決めた以上は確実に実行されなければならない。

しかし、改革が実際に実行されれば、当然、これまでと同じように資金を集め、お金を使うことは難しくなる。今回の改革は、お金に頼った政治活動を変える転機となるはずだ。与野党は決意を示し、そのための具体的方策を示す必要がある。

衆院は政治資金規正法改正案を自民党、公明党、日本維新の会を中心に賛成多数で可決した。改正案は自民党が公明党、維新と個別に修正協議し合意したもので、近く成立する見通しだ。

自民党各派閥の政治資金パーティーをめぐる政治資金収支報告書に記載されない巨額資金不正問題が発覚してから半年が経過した。この間、政治に対する国民の信頼は大きく損なわれている。与野党は、今回の法改正を活用し、政治不信を払拭していくことが重要である。

改正案では、政党交付金の購入者の氏名公表基準を現行の「20万円以上」から「5万円以上」に引き下げるとしている。資金源の把握を容易にするのが狙いだが、基準が引き下げられたことで、企業や支援者が氏名公表を避けるために購入額を減らす可能性も出てくる。

改正案では、政党から議員に支給される政治資金についても、一定の公開に向けた措置を講じている。資金を受け取った議員は、毎年の政治資金報告書で「団体活動」「選挙関連」など大まかな区分ごとに使途を記載するよう義務づけている。

自民党の場合、政治活動費は幹事長や党幹部らが主要選挙区での選挙活動の支援強化や、自民党が名前を公表したくない著名人との会食などに使われてきた。

さまざまな規制が設けられたことは意義深いが、重要なのは改革を着実に実行していくことだ。

自民党の安倍派はこれまで、資金調達に苦労し「隠し資金」をつくってきた。岸田文雄首相も、首相や閣僚による大規模な政治資金パーティーの自粛を定めた政府の閣僚行動規範を無視し、勉強会名目で資金集めを繰り返してきた。

しかし、今後はそうはいかない。政党の公募券販売による資金調達は制限され、政治活動資金の透明性も求められるようになる。

また、所属議員に夏は氷代、冬は餅代と呼ばれた政治活動費を支給していた派閥も解散。議員は派閥に頼ることができなくなる。

そもそも派閥をめぐる政治資金規正法違反疑惑は、派閥と議員が資金のやり取りを政治資金報告書に記載していれば起きなかったはずである。国民の模範となるべき国会議員がルールを守らなかったことに、国民は憤慨しているに違いない。

与野党が多額の資金を必要としない新たな政党行動規範を示すことが不可欠だ。

(読売新聞2024年6月7日号より)



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