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授業料値上げをめぐる議論:国立大学の経営を誰が支えるべきか?

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国立大学の経営が厳しくなり、授業料の値上げを巡る議論も高まっている。大学教育の充実には誰が費用を負担すべきか。官民が連携して議論を深めるべきだ。

文部科学省は省令で国立大学の標準授業料を年間53万5800円と定め、各大学の判断で最大20%引き上げられるとしている。2019年度から東京工業大や一橋大など首都圏の国立大学7校が独自に授業料を値上げしている。

授業料を標準額にしている東京大学も、2025年度から授業料を現行より20%高い64万2960円に値上げすることを検討している。学生からは反対の声も上がっている。値上げが正式決定されれば、全国の国公立大学に波及する可能性がある。

人件費や研究費に充てられる運営費交付金は減少傾向にあり、光熱費の高騰なども追い打ちをかけている。国立大学全86校で構成する日本国立大学協会は「限界」とする異例の声明を出した。

世界トップクラスの人材を育成し、質の高い教育・研究活動を継続していくためには、授業料の値上げは避けられないと主張する人もいるかもしれない。

しかし、そのためには徹底した経営改善努力をしなければならないという大前提があり、安易に授業料の値上げが認められないのは当然です。

企業との共同研究を増やして研究費を分担したり、大学発のベンチャー企業を通じた資金獲得など多角的なアプローチが不可欠だ。社会全体から寄付を募ることも重要だ。

授業料の値上げを行うとしても、経済的に困難な学生の負担を軽減する貸与・奨学金の拡充、授業料免除などの措置と併せて実施し、高等教育を受ける機会を保障すべきである。

今年3月の中央教育審議会の分科会で、委員の伊藤公平・慶応義塾長は国立大学の授業料を150万円に引き上げるべきだと発言した。3倍程度に引き上げるのは現実的とは言い難いが、教育を受ける学生の「受益者責任」を問う発言となった。

大学教育にかかる費用の負担のあり方についてはさまざまな考え方がある。フランスでは大学教育は無料で、多額の税金で賄われている。一方、米国など一部の国では、教育の恩恵を受ける学生が高額な授業料を負担している。

日本では、2040年代には大学入学者数が現在より20%以上減少すると予想されており、大学経営はさらに厳しくなると考えられます。

高度な知識と技能を持つ人材の育成は国家の根幹に関わる問題であり、財源の問題も含め、政府、教育界、経済界が連携して大学のあり方を議論する必要がある。

(読売新聞2024年6月27日号より)



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