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感染症対策行動計画:対策の実効性が問われる

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どれだけ綿密な行動計画でも、実行されなければ今回の失敗は繰り返される。行政と医療機関が連携し、計画の実効性を高める必要がある。

政府は新型インフルエンザなどのパンデミック(世界的大流行)への対応を盛り込んだ行動計画の改定案をまとめた。国民から意見を募り、6月末にも決定する見通し。2013年に策定されて以来、初めてとなる。

新型コロナウイルス感染症は昨年5月に感染症法の第5類感染症に指定され、収束に向かっている。今回のパンデミックで明らかになった課題を一つ一つ解決し、今後の危機に備える必要がある。

現行の行動計画は、2009年に発生した新型インフルエンザの流行を踏まえ策定され、PCR検査やワクチン開発の体制強化などを掲げていたが、今回のパンデミックでは政府の備えが不十分であることが露呈した。

政府は感染症が引き起こす危機の程度を過小評価していたと言わざるを得ない。

新計画では、現行計画の情報収集や医療など6項目に加え、水際対策やワクチン、治療薬、検査など7項目を追加した。

具体的には、入国者を事前に隔離するための空港などの施設の確保や、マスクや検査キットなどの物資の備蓄、保健所の人員配置などが盛り込まれており、政府は対策費を十分に確保することが重要だ。

感染症は数年にわたって繰り返し発生する可能性があります。

流行初期にはウイルス封じ込めに全力を尽くし、後期には医療や病床の確保に努めるなど、バランスのとれた対応が重要だ。政府と専門家が緊密に意思疎通できる体制の構築が望まれる。

十分な医療体制の確保には懸念が残る。

4月に施行された改正感染症法は、公立医療機関に病床の確保や発熱患者の外来診療などを義務付けた。一方、民間医療機関は義務付けの対象外で、事前に都道府県知事と協議した上で診療を行うことを求めている。

政府は法改正で、感染拡大時に5万1千床の病床を確保する目標を掲げているが、確保できる病床数は現時点で目標の6割程度にとどまるとみられる。

日本の医療水準は世界最高水準と言われてきたが、新型コロナウイルス感染症の流行で、感染症の専門医が少なく、医療提供体制も不十分であることが露呈した。

専門医の育成に加え、病院の総合診療医や開業医、看護師らへの感染症対策研修の拡充も重要だ。

(読売新聞2024年5月26日号より)



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