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強制不妊手術に関する判決:司法は「時間の壁」を超えた救済を命じる

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一部の人の命を他の命より重視する制度は到底受け入れられない。国は幅広い被害者を救済する制度を早急に構築すべきだ。

旧優生保護法下で不妊手術を強制された被害者らが国に損害賠償を求めた五件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷は同法が違憲であると認め、国に損害賠償責任があるとの判決を下した。

国に最大1650万円の賠償金の支払いを命じた高裁判決が全て確定した。最高裁の判決は、この法律は「個人の尊厳と人格を尊重する精神に著しく反する」と指摘した。

1948年に施行されたこの法律は、「障害のある子孫の出生を防止する」目的で障害者などへの不妊手術を認めた。この法律に基づき、2万5000人が手術を受けた。本人の同意なしに手術が行われたケースもあった。

このような差別的な法律が第二次世界大戦後に作られ、1996年まで施行されていたことは極めて遺憾であり、最高裁の判決は驚くに当たらない。

訴訟の最大の争点は、不法行為の日から20年で損害賠償請求権が消滅するとした当時の民法の時効が適用されるかどうかだった。

強制不妊手術をめぐる訴訟は2018年以降、全国12の地裁や支部で起こされているが、被害者の手術からすでに数十年が経過していたため、地裁や高裁の判決では時効を理由に請求を棄却するケースもあった。

しかし、最高裁は「時効の成立を理由に国が賠償責任を免れることは正義と公平の原則に著しく反し、全く受け入れられない」と述べた。

被害者は、自分の意思に反して行われた手術によって心身ともに深く傷つき、子どもを産めなくなった。最高裁は、取り返しのつかない人権侵害の重大さを強調し、すべての被害者を救済すべきだと考えたのかもしれない。

国会は2019年、被害者1人当たり一時金320万円を支給する救済法案を可決した。しかし、最高裁が認めた賠償額は1千万円を超え、両者の間には大きな隔たりがある。

最高裁の判決は、今回の5件以外の訴訟にも影響を及ぼす。政府は他の訴訟の決着を待たずに、新たな救済策を講じ、賠償額を見直すことが急務だ。

一時金の支給が認められたのはこれまでに1000人余りで、手術を受けたことを知らない被害者も多いという。

手術から何年も経ち、被害者は高齢化しており、障害者が自力で補償手続きを進めるのは容易ではない。

被害者も政府に責任を認めて謝罪してほしいと願っている。政府は被害者の意向を汲み取り、手厚い支援を行う責任がある。

(読売新聞2024年7月4日号より)



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