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地方銀行の財務状況:「金利のある世界」で試される融資力

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新型コロナウイルスの影響で停滞していた経済は改善傾向にあり、地銀の経営も改善しつつある。「金利のある世界」が戻ってきた今、地銀は地域経済を支えるため、本業の融資力に磨きをかけるべきだ。

上場地方銀行90行の2024年3月期決算がまとまり、最終利益は前期比8.9%増の8885億円となり、7割近くの銀行が増益を確保したという。

七十七銀行(仙台市)は3年連続で過去最高益を更新。山陰合同銀行(松江市)も法人向け融資の増加で過去最高益となった。資金需要が高まる中、多くの地銀は25年3月期も増益を見込んでいる。

特に地方では少子高齢化による人手不足が深刻で、自動化・省力化を推進するための設備投資需要は高い。観光業界では訪日外国人旅行者数がほぼ回復し、飲食・宿泊業の業績改善が鮮明になってきている。

地方銀行は地域経済を支える上で重要な役割を果たしており、事業を強力に推進するために融資を必要とする顧客のニーズに応える必要があります。

今後の課題は、金利の世界でいかに融資能力を高めていくかということだ。

2013年春に導入された日本銀行の大規模な金融緩和政策により、超低金利時代が長く続いています。

地銀は本業である貸出金の利ざやで利益を上げることが難しく、高利回りが期待できる外債に投資する資金運用や、投資信託の販売手数料収入の拡大に注力してきた。

しかし、日銀が3月に異例の金融緩和政策を終了して以降、金利は大幅に上昇。長期金利は木曜に一時1.1%と約13年ぶりの高水準を付けた。

地銀は今後、貸出金利の引き上げに動くだろう。その際には、取引先企業への新規事業のアドバイスや、中小企業の事業承継相談など、融資先とともに成長していくことが重要だ。

地方では、中小企業の業績が回復途上にあることも考慮する必要がある。多くの中小企業、零細企業がインフレや人手不足に悩まされており、23年度は全国的に倒産件数が高かった。地方銀行は融資先の状況を慎重に検討する必要がある。

金利上昇を踏まえると、リスク管理の重要性は増すでしょう。

欧米の金利上昇に伴い債券価格が下落し、購入時に比べ債券の含み損が膨らんだ。きらやか銀行(山形市)など一部の地方銀行は債券関連損失で最終赤字に陥った。

地方銀行全体の今年度債券等の含み損は前年度比1割以上減少したが、約1兆6千億円と依然高水準にある。地方銀行はリスク管理を徹底することが重要だ。

(読売新聞2024年6月1日号より)



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