ホーム Fuji 国防省の不祥事:前例のない事態が国民の信頼を裏切る

国防省の不祥事:前例のない事態が国民の信頼を裏切る

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機密情報の取り扱いがずさんだったり、行われなかった訓練に手当が支払われたり、職場でのいじめや基地の食堂で食事代を払わずに食べるといった事件も起きている。

規律の緩みが目立つ。防衛省・自衛隊は組織を見直し、再発防止を徹底する必要がある。

木原稔防衛相は、防衛省・自衛隊のさまざまな不祥事で計218人を懲戒処分にした。

処分対象は、官僚の最高職である事務次官や、自衛官の最高職である統合幕僚長、陸上、航空、海上自衛隊の幕僚長、防衛情報本部長など。国防の責任を担う幹部が一様に処分されるのは前例がない。

最も多かったのは、国家安全保障に関わる機密情報「特定秘密」の不適切な取り扱いに関する事案で、119人が処分された。大半は海自で発生した。

海自艦艇38隻では、特定秘密を扱う資格を持たない隊員が、コンピューター画面で他国の艦艇の位置や特定秘密に関する情報を見たり聞いたりしていた。

船長の中には、資格のない者が特定の秘密にアクセスできないように配慮する者もいたが、多くの船長はそうした認識が薄かった。資格のない者を通じて他国の船舶の位置情報が外部に漏れれば、他国の船舶が危険にさらされることになる。

今回は外部への情報漏洩は確認されていないというが、不注意との指摘は避けられない。

同盟国や友好国からの信頼を失墜させる恐れもあり、将来的に情報共有に支障が出ることも懸念される。

潜水士が訓練の回数や期間を偽り、潜水手当を不正に受け取った事件でも、海自隊員74人が処分された。不正受給額は過去6年間で約4300万円に上るとみられる。

また、海自基地内の食堂で代金を支払わずに食事をしたとして22人が処分された。

自衛官が公金を不正に受け取るなど言語道断だ。減給の懲戒処分を受けた坂井亮海幕長が責任を取って辞職の意向を表明したのは当然だ。悪質な場合は刑事責任を追及すべきだ。

海上自衛隊については、潜水艦の修理作業に関連し、川崎重工業の社員らから隊員に飲食物や金品などが提供を受けた疑いが浮上し、特別防衛監察の実施が決まったばかりだ。

海自で不祥事が繰り返されるのはなぜか。海自だけの問題なのか。組織の規律が緩んだ原因は何か。不祥事の根源を断ち切らなければならない。

処分を受けたのは約25万人の隊員のうち一部だが、彼らの不正行為が自衛隊全体への信頼を損なっていることは深刻に反省すべきだ。

(読売新聞2024年7月13日号より)



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