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四国の木造駅舎、廃止へ 利用者減少で維持費高騰

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読売新聞
徳島県小松島市にある、簡素なアルミ製の中電駅で電車を待つ学生たち。

徳島・高知 — 長期にわたる経営不振に悩む四国旅客鉄道(JR四国)は、古い木造駅舎の取り壊しと、バス停のような簡素な駅舎への建て替えを進めている。

同社は維持費削減を目指し、これまでに13カ所の駅舎を整備してきた。地元のランドマークとして、また旅行者に旅の実感を与えてきた旧駅舎の取り壊しには、住民から反対の声が上がっている。

四国旅客鉄道株式会社提供
2022年の旧中電駅舎

徳島県小松島市の中電駅では2022年、1936年に建てられた駅舎が取り壊され、アルミ製の新しい駅舎に建て替えられた。牟岐線の中電駅は現在、広さ10・8平方メートルで、ベンチ2つと券売機1台が設置されているのみだ。

同駅の昨年度の1日平均乗降客数は826人で、朝夕の通勤・通学時間帯を中心に学生や一般の利用者が多い。

通学にこの駅を利用している18歳の女子高校生は、駅が狭いことの不便さを訴えた。

「雨の日は全員が乗れないので、多くの人が傘をさしながら外に立って電車を待っています」と彼女は語った。

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徳島県小松島市の新しい中電駅舎内にはベンチや券売機が設置されている。

JR四国は厳しい状況に直面している。鉄道運輸収入は1991年度の370億6500万円をピークに減少を続け、2023年度には223億3400万円に落ち込む。旧国鉄が分割民営化されて発足した1987年以降、黒字経営が続いている。

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同鉄道は、駅の86%を無人化し、定期列車の約6割をワンマン運転にするなど、人件費を削減して業務の効率化に取り組んできた。

駅舎の簡素化は2014年度から始まった。駅の大規模改修には数百万円の費用がかかり、さらに耐震補強工事も必要で1千万円以上かかる。同社は今後、全体の3割近い約70駅で簡素化が必要だとみている。

住民は移転に反対

駅舎は「地域の顔」としての役割を果たしてきたため、地元住民の間で反対の声が高まっている。

JR四国は、三角屋根の洋風建築で知られる徳島県東みよし市の阿波加茂駅の駅舎が老朽化しているため、駅舎の簡素化を計画していた。

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Awa-Kamo Station in Higashi-Miyoshi, Tokushima Prefecture, is to be rebuilt.

同社が2022年1月に移転の意向を自治体に伝えると、住民らは移転反対の署名運動を開始。駅の簡素化で町の入り口が寂れて活気がなくなるなどと主張し、850筆の署名を町に提出した。

JR四国と協議を重ねた結果、市は駅舎の存続は困難と判断した。解体費用はJR四国が負担し、市はトイレや交流スペースなどを備えた木造約45平方メートルの新駅舎を約1600万円で建設する。

高知県佐川町は2016年、JR四国から土讃線西酒匂駅の駅舎を移管された。町は約1600万円をかけて耐震補強や改修工事を実施した。築100年の駅舎には、近くの清流「仁淀川ブルー」をPRする施設も入る。

駅舎は、日本全国の在来線が乗り放題になるJRグループの「青春18きっぷ」の宣伝ポスターに使われた。

町の職員は「駅舎を地域のシンボルとして残すことができてうれしい」と語った。

香川工業高等専門学校の宮崎浩介教授は「JR四国の財政状況を考えると駅舎の簡素化はやむを得なかった」と指摘。

「しかし、駅舎が人々の集い、交流の場としての機能を失えば、駅周辺は寂れてしまう。利用されなくなるという悪循環に陥りかねない」

宮崎氏は市と鉄道会社に対し、駅舎に人を誘致する方法を見つけるよう求めている。



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