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受賞歴のある作家、宮島美奈が「世界征服」を目指す

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読売新聞
大津市で、琵琶湖を背景に立つ作家の宮島美奈さん。彼女が巻いている帯は、書店員がフェルトなどを使って手作りしたもの。「裁縫が得意なので、ほつれた部分を縫い直すなど気を配っています」と話す。

受賞歴のある作家、宮島美奈さんは、彼女が住み、彼女の作品の舞台となっている大津市から日本を「乗っ取る」つもりだ。

宮島さん(40)は4月、デビュー作「成瀬は天下をとる」で2024年度本屋大賞を受賞した。同賞は書店員が最も売りたい本に贈られる賞だ。


The cover page of “Naruse wa Tenka o Tori ni Iku,” written by Mina Miyajima and published by Shinchosha

新潮社から出版されたこの本は、大津市に住む成瀬あかりという思春期の少女を主人公にした短編小説集である。本の表紙で成瀬が埼玉西武ライオンズのユニフォームを着ているのは、彼女がプロ野球チームのファンだからではなく、物語の中の「ありがとう西武大津店」で、感謝の気持ちを込めてユニフォームを着て西武百貨店大津店が閉店するまで毎日通っているからである。

「膳所から来ました」では、成瀬が友人とお笑いコンビを組むほか、「レッツゴーミシガン」では、琵琶湖の観光船ミシガン号で県外からの観光客を案内する。

そして、続編となる短編集『成瀬は信じた道を行く』では、大学生になった成瀬がびわ湖大津観光大使に任命され、大津市をPRすることになる。

大津市に15年間住んでいる宮島さんは、執筆活動や住んでいる場所への思いを語った。

物語に見る大津への愛

どこまでも青い湖面を悠々と進む琵琶湖観光船「ミシガンクルーズ」。宮島さんは野球のユニフォームのようなシャツに「びわ湖大津観光大使」と書かれたたすきを肩にかけて、大津市の大津港に姿を現した。


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宮島選手が着用するユニフォームの背面

制服もたすきも成瀬が本の中で着用している。客船の前では、宮島さんがまさに成瀬らしいポーズをとってくれた。[Are you wearing them] 「それは私の愛ではなく、成瀬の愛よ。」と、彼女は冗談めいた笑顔で答えた。

「伊坂幸太郎さんの小説の舞台が仙台であるように、私がたまたま大津に住んでいるので、大津について書いています」と彼女は語った。

廃業する西武百貨店の前で毎日生放送のバックに登場したり、幼なじみとコンビを組んで漫才コンテスト「M-1グランプリ」に出場したり、頭を丸坊主にして髪の毛の伸び具合を測る実験をしたりと、中高生の青春時代をユーモラスに描いている。


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「ゼゼカラ」は成瀬と友人が結成したお笑いコンビの名前です。

学業もスポーツも優秀だが、少し変わった発言や行動で周囲の固定観念を揺るがすこともある。しかし、宮島さんは成瀬さんが特別だとは思っていないという。

「成瀬を自由にさせてあげている感じです」と彼女は言う。「まるで自分の子どものように、普段通りの食事を用意し、お風呂に入れ、寝かしつけるように書いています。彼女は自由な子どもなので、成瀬の自由な生き方を伝えるのが作家としての私の仕事だと思っています。」

作中には「マスク」「ソーシャルディスタンス」といった言葉が散りばめられ、コロナ禍を生きる成瀬の様子が伺える。行動制限が厳しくなる中、多少の違和感はあっても、できることを精一杯やろうとする姿勢に、読者は目を奪われたのかもしれない。

「成瀬のような人間になりたかったけれど、なれなかった人はたくさんいたと思います。特に女の子は、周りの目を気にして、やりたいことができなかった人もいるでしょう。だからこそ、成瀬は多くの読者に受け入れられたのかもしれません」と彼女は語った。

夢は保留

やりたいことをやり遂げているのは成瀬さんだけではない。静岡県生まれの宮島さんが初めて物語を書こうと思ったのは、小学3年生の時だった。

読書感想文コンテストで受け取った書評が、彼女に執筆の意欲を掻き立てた。「書評には『あなたの文章は人を惹きつけます。物語を書くことをお勧めします』と書かれていました。『ああ、私にはその才能がある』と思ったのを今でも覚えています」と彼女は語った。

ノートに物語を書いてクラスメイトに読んでもらったが、才能が開花する前に20代半ばで作家になる夢を諦め、大学卒業後は子育てをしながら在宅勤務をしていた。


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琵琶湖のほとりに立つ宮島美奈。

再び小説を書き始めたのは2017年。現実とは異なる京都の神秘的な一面を描いた森見登美彦さんの小説「夜行」を読んで、執筆意欲が湧いたという。

「並行世界があって、別の世界では自分が小説家になっているかもしれないと思ったんです。小説を書けば、その世界での自分に会えるかもしれないと思ったんです」と彼女は言う。彼女は、窪美澄や吉川トリコなどの作家が受賞した、女性が女性のために書いた作品に与えられる文学賞であるR-18文学賞に応募し始めた。

何度かの落選を経て、2021年に『ありがとう西部大賞』で大賞を受賞。2023年3月、39歳の時に受賞作を含む『成瀬は天下をとる』を出版し作家デビューした。

他のジャンルでも書きたい

宮島さんのデビュー作は、現在50万部以上売れており、ベストセラーとなっている。突然の成功に「一瞬恐怖を感じることもある」と彼女は言う。

“人数、個数、総数 [of copies] 「これはすごいことであり、またこのようなことが起こるのだろうかと心配しています」と彼女は語った。


The cover page of “Naruse wa Shinjita Michi o Iku” published by Shinchosha

それでも、1月に続編となる『成瀬は正しい道を行く』が刊行された。大学生になった成瀬が、相変わらず自分の道を進む姿で読者を迎える。今後の展開も気になるが、宮島さんは3巻まで書いて一旦休むつもりだという。

「私は実は、複雑で危険な状況を描く恋愛小説が好きなんです。恋愛小説やミステリーなど、他のジャンルでもぜひ書きたいです。」

彼女は通常、大津の自宅で午前中に執筆活動を行い、午後は電子メールの返信やインタビューへの対応を行っている。娘が小学校に通っている間に仕事をしている。

「成瀬さんにとって、本屋大賞受賞は『一過性』なのかもしれません」。作家としての道は始まったばかり。自分なりの「天下取り」を目指して、日々机に向かっている。



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