ホーム Fuji 博士号取得者:その才能を広く活用できる社会に

博士号取得者:その才能を広く活用できる社会に

9
0


博士号を有する者は、科学技術や産業の発展に不可欠な人材であり、その専門知識を活かす機会を広げていくことが重要である。

文部科学省は、産業競争力強化のため、博士号取得者を増やす活用計画をまとめた。2040年までに人口100万人当たりの博士号取得者数を現在の3倍の370人に増やすことを目標としている。

近年、人工知能や生命科学などの分野では技術の進歩が目覚ましく、高度な知識や技術を持つ博士号取得者の確保競争が世界的に激化しており、海外でも博士号取得者が増加しています。

しかし、日本ではその数は減少し続けており、博士課程に進学する学生数も2003年度のピーク時に比べて20%減少しています。

学生からは「博士課程に進学しても経済的に報われない」「博士号取得後の就職が不安」といった声も少なくないという。こうした不安を払拭しなければ、文科省が掲げる数値目標の達成は容易ではない。

文科省は1996年に、博士研究員(ポスドク)を1万人育成する計画も立ち上げた。しかし、この計画で輩出されたのは、高学歴にもかかわらず就職先がなく収入の少ない研究者ばかりだった。

日本では、「博士号を取得した人は学術研究に従事するもの」という固定観念が強すぎるのかもしれません。

新卒一括採用が一般的であるため、博士号取得者が専門職として特別扱いされないケースが多い。企業によっては「頭が固くて融通が利かない」と考えて、博士号取得者の採用に消極的になるところもある。

海外では、博士号取得者には大企業、官公庁、スタートアップ、国際機関、教職など多様なキャリアパスが開かれています。批判的思考力や分析力を備え、社会課題の解決に取り組める博士号取得者を適切に評価し、活用することが重要です。

有力大学の研究者らが中心となる団体は「専門的な技術教育を孤立的に行うのではなく、広い視野を持ち、チームリーダーとして活躍できる人材の育成が必要だ」と指摘する。

大学院も旧態依然とした教育から脱却し、社会のニーズに応えられる人材の育成に努める必要がある。女性の博士号取得者をいかに増やすかという課題もある。特に理系の分野では女性が少ない。対策が急務だ。

優秀な博士号取得者を適正に扱うよう社会の意識改革が重要だ。文科省も産業界との連携強化などに取り組むべきだ。

(読売新聞2024年6月25日号より)



もっとニュース

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください