ホーム Fuji 千葉県では昔ながらの列車に乗って懐かしさを感じる。小湊線の列車は今も昔のまま運行している

千葉県では昔ながらの列車に乗って懐かしさを感じる。小湊線の列車は今も昔のまま運行している

13
0


読売新聞
上総牛久駅の駅長、永倉邦夫さん(右)が、駅に到着した小湊線の電車の運転士から「タブレット」と呼ばれるリング状の定期券を受け取っている。

「小湊線の電車がカタカタと音を立てながら田園地帯を走っていくのが、今でも目の前に浮かびます。」

これは、千葉県市原市出身の懐かしい女性が読売新聞に寄せた手紙です。その手紙を読んで、小湊鉄道の列車に乗ってみたいと思いました。


読売新聞
小湊線の車窓からは、植えたばかりの田んぼが見える。

曇り空の穏やかな朝、その日最初の緑色に塗られた電車が千葉県市原市の五井駅を出発する。私は伝統的な対面式の4人掛けシートに座り、窓の外を眺める。田んぼの間を行ったり来たりしている田植え機。植えたばかりの苗がいっぱいの水田にはキジとそのひなが群がり、水面には雲や家々の屋根が映っている。

「都心から近いのに自然が豊かなのが魅力。線路沿いに咲くアジサイや飛び交うホタルを眺めることもできます」と語るのは、小湊線の車掌を務める橋本博也さん(27)。昨年4月に異業種を辞め、同社に就職した自称鉄道マニアだ。小湊線は全18駅のうち13駅が無人駅のため、無人駅に到着するたびにホームで降りて切符を回収するのが車掌の仕事。走行中はキスロック付きの大きな財布を持ち、車内を歩き回り、切符を購入する乗客の対応にあたる。


読売新聞
小湊線の無人駅のひとつで、車掌が乗客から切符を受け取っている。

列車は約30分で上総牛久駅に到着。大正年間に建てられた駅舎は、小湊鉄道が創業100周年を迎えた2017年に国の登録有形文化財に指定された22棟のうちの一つ。ファンに愛される赤とクリーム色のツートンカラーの車両がホームに停まると、長倉邦夫駅長(75)が運転台まで歩いて行き、運転手からリング状のものを受け取る。「タブレット」と呼ばれる定期券のようなものだ。

革張りの金属製のリングは直径約30センチ。擦り切れて布で補強しなければならないほどだ。小湊線には単線区間が2か所あり、衝突を避けるため運転士がタブレット端末を携帯していないと列車は通過できない。岐阜県の長良川鉄道や青森県の津軽鉄道などとともに、小湊線はこの種のパスシステムを採用している数少ない鉄道路線の一つだ。

列車が動き出すと、車掌が車内後方から永倉さんに声をかける。「お疲れ様でした!」。20歳から小湊線の運転を見守り始めて55年になる駅長は、列車が見えなくなるまで指差し呼びを続ける。


読売新聞
五井駅に保存されている蒸気機関車

小湊鉄道


読売新聞

小湊線を運行する小湊鉄道は1917年に設立され、来年には1925年の開業100周年を迎える。五井駅から上総中野駅までの全線39.1キロの運行は1928年に始まった。当初は千葉県鴨川市の小湊まで路線を延長する計画だったため、社名に小湊の名前が使われている。



もっとニュース

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください