2024年6月8日 15時46分
出生数の減少に歯止めがかかっておらず、このままでは国の社会・経済の担い手である人口が減少し、社会保障制度の存続も危ぶまれる状況にあります。国難を乗り越えるためには、社会全体で取り組むことが不可欠です。
厚生労働省は2023年の日本の人口動態統計を発表した。
日本の新生児数は72万7277人、合計特殊出生率(一人の女性が一生に産むと推定される子どもの数)は1.20で、いずれも8年連続で減少し、過去最低を記録した。
2015年までは毎年出生数が100万人を超えていたが、それ以降の8年間で出生数は30%近く減少した。
婚姻数の減少も極めて深刻で、昨年の婚姻組数は戦後初めて50万組を下回り、約47万組となりました。
結婚するかどうかは個人の自由ですが、結婚したいのに経済的な理由で諦めている人がいるとしたら、それは問題です。
若者の多くは非正規労働者であり、十分な収入を得ることが難しい場合があります。
政府は民間企業に対し、若者の正社員化や賃金引き上げをもっと強く促し、労働条件の改善を後押しすべきだ。また、良質な住宅を供給するなど、さらなる努力が望まれる。
一方、国会は少子化対策を盛り込んだ子ども・子育て支援法の改正案を成立させた。岸田文雄内閣は「前例のない規模」と評価している。
子育て世帯への経済支援については、児童手当の所得制限を撤廃するほか、支給期間を現行の「中学生まで」から「高校生まで」に延長する。第3子以降は年齢にかかわらず、月額3万円に増額する。
子育て世帯の経済的負担を軽減するのが目的だ。
しかし、財政支援の強化だけでは出生率の低下を克服することはできない。
近年、晩婚化、晩産化が進み、第二子、第三子を産みたくても産めない家庭も少なくありません。
経済的な理由で子どもを産めない若者に加え、「そもそも子どもを産みたくない」という若者も増えているようだ。
さまざまな事情があるだろうが、子どもを産みたくない人も、老後に年金や介護サービスを受けるようになると、世代間支援の大切さを実感するかもしれない。
人口減少に伴う課題は多い。国民が問題意識を共有できるよう、行政が啓発に努めることが重要だ。結婚や出産をためらう若者の事情や背景を把握し、総合的な対策を講じる必要がある。
(読売新聞2024年6月8日号より)