The Yomiuri Shimbun
2024年6月8日 20:00(日本時間)
小売業や飲食業などの業界をカバーする大手労働組合、UAゼンセンの調査によると、回答者の約50%が過去2年間に顧客から嫌がらせを受けたことがあるという。
顧客による不当なクレームが社会問題化する中、企業は従業員を守るための対策を講じる動きを加速させている。
アンケートでは「飲酒して騒いでいた客に声を小さくするようお願いしたら、謝罪を要求され、動画を撮られてネット上で誹謗中傷された」「冬場、店外で2時間以上謝罪させられた」などの事例が挙がった。
UAゼンセンの会員約3万人が回答した調査では、いわゆるカスタマー・ハラスメントの被害に遭った人は46・8%に上った。ハラスメントへの意識が高まり、企業の対策強化も進んだこともあり、4年前の前回調査より10ポイント減ったが、依然高い水準にある。
店員への嫌がらせ行為を行った客は高齢者が多く、60代とみられる客が29%で最も多く、次いで50代とみられる客が27%、70代以上が19%だった。男女別では男性が7割を占めた。具体的な嫌がらせ行為は、暴言が40%、脅迫・威嚇が15%、同じ苦情を繰り返すのが14%など。また、セクハラや土下座を強要されたという回答もあった。
名札ポリシーの見直し
対策を強化する企業としては、ローソンが火曜日、従業員に名字入りバッジの着用を義務付けている原則を見直し、役職名と任意の頭文字またはアルファベットの使用を認めると発表した。ファミリーマートも5月下旬、店舗の判断で偽名バッジの使用を認め始めた。
通信大手ソフトバンクは東京大学などと共同で、人工知能(AI)を活用して電話の相手の声を怖くないようにする技術を開発している。AIは、例えばアナウンサーのような穏やかで心地よい声に変えることができる。
コールセンターの従業員の心理的負担が軽減されれば、冷静な対応が可能になると期待される。ソフトバンクなどは、長時間のクレームや暴言を吐く電話に自動音声で注意を促すシステムも検討しており、早ければ25年度にも実用化を目指す。
過剰な苦情
企業は長年、顧客からのクレームを商品やサービスの改善につながる情報源とみなしてきた。しかし近年、顧客からのクレームが度を越し、犯罪行為に近いものになっているケースもある。2016年には三重県の宅配便営業所で男がチェーンソーを使って従業員を脅迫する事件も起きた。
従業員が顧客と頻繁に接触する小売業や飲食サービス業では、慢性的に人手不足に陥っています。
大手小売り会社の幹部は「接客による嫌がらせを恐れる従業員は多い。安全な労働環境を整備しなければ、人材確保は難しい」と話す。
UAゼンセンは、法規制の確立も視野に政府に具体的な対策を求めている。
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