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兵庫県知事の不祥事:内部告発者はなぜ保護されなかったのか?

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県職員による知事の不正行為の告発に対する兵庫県の対応については、依然として大きな疑問が残る。告発者は懲戒処分を受け、事件は十分に調査されなかった。これは内部告発制度を揺るがしかねない問題だ。

兵庫県の斉藤元彦知事は、県幹部から不正行為を告発された。同知事は3月にマスコミなどに告発状を郵送。4月には内部告発制度に基づき、同じ告発状を県の窓口課に送った。

告発内容は知事の物品受領や職場でのいじめなど7項目に及んだ。これに対し知事は直ちに告発を否定し、「一連の嘘」と呼び、その職員を上級職から解任した。

また、県は独自調査を行い、告発文書の内容は事実無根であると判断し、職員を停職3か月の処分とした。職員は今月、自殺とみられる死去した。

公益通報者保護法は、通報を理由とする不当な扱いを禁じている。県は通報者を公益通報者として扱い、保護すべきだった。県の対応は同法違反の疑いがあり、不適切としか言いようがない。

県議会は処分を受け、県の調査では公平性が保てないとして、強い調査権限を委ねる地方自治法第100条に基づく委員会を設置した。

一方、県は近く第三者機関を設置して知事の不正行為を詳しく調査するとしている。告発内容を徹底的に精査するとともに、一方的に処分した県の対応も検証する必要がある。

全国47都道府県はすべて内部通報窓口を設置しているが、弁護士事務所など府庁外に窓口を設けているのは29県にとどまる。兵庫県は府庁外に窓口を設けていない県の一つ。市町村の約3割は内部通報窓口を全く設けていない。

行政機関には、企業の不正行為に関する内部告発を受け付ける窓口の役割も期待されており、自治体内外を問わず、内部告発の窓口を早急に設置する必要がある。

内部告発をめぐるトラブルは珍しくない。和歌山市では、公金の不正使用を告発した職員が、その告発で懲戒処分を受けた職員と同じフロアで働かされた。告発者はその後自殺した。

鹿児島県警では今年、内部文書を漏洩したとして国家公務員法の守秘義務違反の疑いで元生活安全部長が起訴された。元部長は「自分の行為は漏洩ではなく内部告発行為だ」として無罪を主張する方針だ。

内部告発は不正の発見と是正につながる。自治体の首長らは、内部告発制度の意義と必要性を改めて認識する必要がある。

(読売新聞2024年7月20日号より)



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