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共同親権の導入:周知徹底、体制整備を

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離婚後、子どもの親権を片方の親に与えるという長年の慣習が変わろうとしている。社会に混乱を招かないよう、政府は万全の備えをしておくことが肝要だ。

国会で成立した民法改正案などの目玉は、離婚後に両親が子どもの親権を共有する「共同親権」の導入だ。現行の単独親権を77年ぶりに見直し、両親が合意すれば共同親権も選択できるようにする。改正法は2026年度までに施行される。

改正案によれば、両親がすでに離婚し、どちらかが単独親権を持っている場合でも、家庭裁判所に申し立てて承認されれば共同親権に変更できるようになる。

親権とは、親が子どもの養育や教育、財産管理などを行う権利と義務のこと。現行制度では、親権を持たない親は子育てに関与できないとの批判もある。

共同親権の導入により、両親が子育てに責任を持ち、子どもの利益が確保されるのであれば意義深いことだろう。

共同親権を選択した両親は、子どもに関する事柄を原則として一緒に決めることになりますが、子どもの習い事など「日常生活上の通常の行為」や緊急手術など「差し迫った事情」の場合は、片方の親だけで決めることもできます。

ただ、両者の境界は不明確であり、政府はわかりやすいガイドラインを作成し、国民に周知するよう努めることが望まれる。

懸念されるのは、虐待や家庭内暴力に関連した離婚である。家庭内暴力やその他の虐待の加害者が親権を得て、被害者との接触を強要するような状況は避けなければならない。

家庭内暴力などの虐待の恐れがある場合、家庭裁判所が単独親権を選択することになっている。家庭裁判所の役割は重要だが、家庭裁判所の裁判官や調査官は扱う事件数が非常に多い。このような状況で、複雑な家庭事情を適切に理解し、判断できるだろうか。

親子関係に詳しい心理学者など専門家と連携し、裁判所の運用能力を拡充することが不可欠だ。

改正法では、別居中の親に養育費の支払いを請求できる「法定養育費」制度が新設されたほか、調停手続きで家庭裁判所が親と子の面会交流を促す規定も設けられた。

諸外国では、離婚時に養育費の支払いや面会交流の権利が法律で定められているところもありますが、そうした合意がないまま離婚する日本では、養育費の未払いや面会交流の拒否などの問題が後を絶ちません。この状況を変えることが急務です。

日本では年間約18万組の夫婦が離婚し、その半数近くには未成年の子どもがいる。結婚生活が終わっても親子の関係は一生涯続く。子どもの幸せを第一に考える制度づくりが大切だ。

(読売新聞2024年5月30日号より)



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