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元検事長起訴:情報非公開が国民の不信を招く

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捜査に大きな権限を持つ検察庁の元幹部が性犯罪で起訴された。

検察側は、自らの組織内の同僚に対して甘いという疑惑を避けるために徹底した説明をする必要があったが、その対応は全く不十分だった。

大阪地検特捜部は、元同庁検事長の北川健太郎容疑者を準強制性交の罪で起訴した。北川容疑者は検事長時代の2018年9月、大阪市内の公邸で泥酔した部下の女性に性的暴行を加えた疑いが持たれている。

検事長は地検のトップで、捜査や公判を指揮する。北川氏は最高検刑事部長などを歴任し、「関西のエース検事」と呼ばれた。

検察の要職を歴任した元高官が性犯罪で逮捕・起訴されるのは、決してあってはならない異例の事態だ。検察は裁判を通じて実態を明らかにし、厳正な処罰を求めるべきだ。

理解しがたいのは、事件を捜査した大阪高等検察庁の対応だ。

高検は先月、北川容疑者を逮捕した際、被害者の特定につながる恐れがあるとして、犯行日時や場所、状況など事件の概要を一切公表しなかった。

性犯罪の場合、捜査機関が被害者のプライバシーに配慮するのは当然だが、高検が説明責任を果たそうとしなかった姿勢は不適切だったと言わざるを得ない。

これでは、あたかも検察庁が同僚のスキャンダルを隠蔽したかのようであり、このような行動をとれば、検察官が強力な逮捕権限を正当に行使したかどうかを誰も検証することができなくなる。

また、この事件は5年以上前の出来事である。事件から1年後、北川氏は前職の検事長を辞任し弁護士に転身した。定年まで3年を残してなぜ辞任したのか、検察関係者の間では疑問視されているという。

なぜ今逮捕したのか。事件発生当時から、高検は女性の身に起きたとされる出来事を把握していた可能性がある。こうした疑問は拭えない。犯行日時や状況の一部が公表されたとしても、被害者が特定される可能性は低い。

社会的に大きな影響を及ぼす事件では、性犯罪であっても、個々の事件ごとにどこまでを公表できるかを慎重に検討することが重要だ。

近年、検察官が取調室で被疑者を暴言で罵倒したり、捜査の筋書き通りの供述を強要したりする問題が相次ぎ、検察に対する世間の目は厳しい。

「常に『検察大綱』に立ち返り、公正かつ誠実に業務に当たることが大切だ」と、今月、検事総長に就任した畝本尚美氏は言う。検察官の倫理綱領である『検察大綱』は、権力の行使に当たって独善に陥ることなく、謙虚な姿勢を保つよう定めている。

(読売新聞2024年7月18日号より)



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